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[体験者]川上さん 入社15年目 ベテラン社員----------
外資系企業を経て、現在は大手シンクタンクでコンサルタントをしている川上さん(仮名)。ホテルに勤務していた親が所有するマナーの本を小さい頃からよく読んでいたそう。
さらに、外資時代には研修や出張で海外に行くことも多く、国際経験も豊富だ。そんな川上さん、「エレベーターは男性が先に入って“開”のボタンを押して待っているものだと思っていました」と、認識不足に愕然。
「人数が多いときにはそれもOKですが、エレベーターの外にあるボタンを押すか、扉が閉まらないように手で押さえて、女性を先に通すのがスマートですよ」という先生の言葉に、「確かに……」と納得の様子だ。
さらに、迷ったのがレストランに入って席につくまで、男性が前を歩くのか、女性の後ろを歩くのか、という点。
「ウエイターが案内する場合は、自分が女性の後ろ。ウエイターがつかない場合は、自分が前を歩いて、テーブルが近くになったら女性を先に席に通す……という、“エスコート”と“レディーファースト”の使い分けが、なかなか難しかったですね」
招待されたパーティで著名人に会った場面では、「嬉しくて自分から話しかけることが実はこれまでもありました。あくまで主催者に紹介を頼むという方法を知り、今までを振り返ると冷や汗が出てきました」と苦笑い。
社交の経験も豊富だっただけに、自信をどんどんなくしてしまった川上さん。「初対面でも、気軽に話しかけてしまったり、自分から握手を求めてしまったり。反省することが山のようにあります」という川上さんに対し、「とくに“握手”という行為は、海外では政治的にも重要な意味を持っているんですよ」と、上月先生はアドバイスする。
「近年でとくに有名なのは、2012年6月、英国のエリザベス女王が北アイルランドを訪問し、IRA(アイルランド共和軍)元司令官で自治政府の副首相を務めるマクギネス氏と握手を交わしたというニュースです。このニュースは歴史的和解の象徴として世界中を駆け巡りました。握手はただの挨拶に留まらない重みをもっていることも、国際舞台で仕事をするうえで忘れてはならないことのひとつです」
そんな先生の助言を聞いた川上さん。「自分にとって何気ない行動でも相手にとっては不快なことがあるんですね。真の国際人になれるよう、さらに経験と知識を深めたいです」。
【1】エレベーターの乗り方
(×)我先に乗ってしまう――女性より先に乗り込んでしまった。先に乗ってエレベーター内の「開」ボタンを押しておいて、女性に乗ってもらおうと考えたようだ。
(◯)ドアを押さえて女性を先に――男性がドアを押さえて女性を先に通す。レディーファーストはプライベートにおける習慣であって、ビジネスでは役職の上下が行動基準。とはいえ、男性が上位者であってもやっておいて間違いはない。
【2】レストランへ入店の仕方
(×)女性をほったらかす――店頭にあるメニューをひとりで眺めるなど、マイペース。ウエイターに通されると、そそくさとついて行き、女性は置いてけぼりに。
(◯)案内がある、ないで対応は異なる――入店した後、ウエイターの案内がある場合は、ウエイターに続き、女性、男性の順。案内がない場合は、男性が前を歩き、空いているテーブルを探し出し、テーブル近くで女性を先に席に通すのが鉄則。
【3】著名人と話をする方法
(×)勝手に話しかけてしまう――立食パーティーの会場にて、著名人を見るや舞い上がってしまう。「私、ファンなんです」。嬉しくてつい自分から話しかけてしまう。
(◯)主催者に依頼しよう――パーティーで著名人や上位者に会った場合は、主催者に必ず声をかけて紹介してもらうのが礼儀。初対面でいきなり話しかけるのはマナー違反。上位者から直接話しかけてきた場合は問題ない。
【4】握手の仕方
(×)相手より先に手を出す――「お近づきの印に」と、下位者の立場である自分から握手を求めてしまった。嬉しさから両手でがっしりと相手の手を握りしめた。
(◯)上位者が手を出してから――握手をする場面では、先に手を差し出すのは、基本上位者から。国際儀礼では、握手する手は右手。相手の目を見ながら笑顔で握手しよう。相手が上下に振ってきたら合わせる。体の距離は腕1本分くらいを目安に。強く握る必要はないが、弱いと相手に与える印象も弱々しいものになるので、しっかり握ることを心がけたい。
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上月マリア----------