大正期に活躍した詩人・小説家の室生犀星が晩年に発表した小説を映画化した「蜜のあわれ」の試写イベントが1月27日に都内で行われ、主演の二階堂ふみと大杉漣、石井岳龍監督が登壇した。
二階堂ふみと大杉漣が濃密な時間を振り返る「蜜のあわれ」試写イベントの模様はこちら!
映画は、変幻自在の金魚の姿をもつ少女・赤子(二階堂)と老作家(大杉)の奇妙な関係を幻想的なタッチで描く。高校生の時に原作を読んで以来、ずっと出演を夢見ており、石川・金沢にある室生犀星記念館にも足を運んだという二階堂は「ずっとやりたいと言い続けていたら、出合うときがあるんだと実感した」と万感の思いを語る。
人であって人でない個性的な役どころについては「頭で考えてやるよりは体から外に出していくやり方。全部すごく気持ちがいいセリフでしたし、セリフを発するだけで新鮮な毎日でした」と振り返ったが、「二階堂さんは金魚(そのもの)なんですよね。それがすべて」(大杉)、「二階堂さんはテスト時点から役が憑依(ひょうい)していて、もったいないから止める感じでした」(石井監督)と近くで見ていた2人もはまり具合を絶賛。石井監督は、共に初タッグとなる二階堂・大杉の相性のよさを指摘し「2人の芝居に酔わされましたね。これをどう届けるかが私の使命です」と感慨深げに語った。
「戦わなくちゃいけない現場だった」(大杉)と撮影中は苦労も多かったようだが、わずかな時間を利用して2人はドライブに行き、ウサギと触れ合える施設で羽を伸ばすなど親睦に深めたそう。「役としてめでていただいた」と先輩への感謝を語った二階堂の言葉を受け、大杉は「物を作るっていうのはシステムじゃないな。映画って、気持ちなんだと思います」としみじみ。老作家を演じ終えた今「老いていくことって悪くないなと思います」と笑顔を見せた。
「蜜のあわれ」は、真木よう子、韓英恵、上田耕一、渋川清彦、高良健吾、永瀬正敏らが脇を固める。4月1日から全国公開。