誕生から65周年を迎えたスヌーピー。これを記念して、「スヌーピーコミックセレクション」シリーズ(KADOKAWA)が刊行された。5カ月連続刊行となった本書は、50年代から90年代まで、各年代で印象的なPEANUTSの物語をセレクトしたコミック集。谷川俊太郎による新訳にも注目だ。また、「スヌーピーはゴッホの絵を所有していた!」といった秘密なども明かされる。かわいいだけじゃなく哲学的でおもしろい、唯一無二の世界を存分に堪能できる内容だ。
本書のほかにも、街中はスヌーピーへのお祝いムード一色! 限定アイテムが多数発売され、スヌーピーとコラボしたカフェもオープン。さらに昨年末には初の3D映画『I LOVE スヌーピー THE PEANUTS MOVIE』が公開され、国内映画ランキング初登場3位を記録した。こんなにも愛されるスヌーピーだけど、そういえばたくさんいる犬のキャラクターってなに? なんで時々変装しているの? など、実は知らないことだらけ……。
それならば、誰よりも詳しい人に根掘り葉掘り聞いてみたい! というわけで日本一スヌーピーに詳しいといっても過言ではない、ソニー・クリエイティブ プロダクツPEANUTS推進部の中村浩子さんにメールインタビュー。あまり知られていない秘話を聞けば、あなたももっとスヌーピーを好きになる!?
――日本でも大人気のPEANUTSですが、上陸当時の反応はいかがだったでしょうか?
「アメリカから来たおしゃれなもの、という印象だったようです。上陸当時、人気女優の岡崎友紀さんもスヌーピーが大好きで、いつも取材の際にスヌーピーのぬいぐるみを持っていました。それがきかっけで、スヌーピーが好きになった人も多かったようです」
――1960年代以降、スヌーピーがメインキャラクターになっていきますが、それとともに犬のキャラクターもたくさん誕生します。彼らの関係は?
「彼らは全員、スヌーピーのきょうだいです。スパイクがスヌーピーにとってお兄さんであるということ以外、実は、きょうだいの序列は不明なんです。というのも、原作ではbrother, sister という表記しかされてないからです。日本語では、兄・弟・姉・妹と序列がわかる表現を用いるため、古い訳で弟、妹をあてたようですが、スタジオの見解としては、序列は不明ということになっています」
――たくさんいるきょうだいの中でも、特に人気の高いキャラクターは誰ですか?
「一番初めに登場したスパイクは“荒野のロンリーガイ”というキャラクター設定で、登場回数も多いので、きょうだいの中では人気が高いです。また、近年、一般に“ぶさかわ”という概念がうまれた結果、PEANUTSの中の“ぶさかわ”として支持があがっているみたいです」
――スヌーピーは変装も得意ですが、全部でどれくらいのキャラクターに変装しているのでしょうか?
「一般的にいわれるスヌーピーの変装ですが、スヌーピーが空想の中で、いろいろな職業・人物・動物などになりきっているという設定です。形態模写的なものも含めると、軽く100は超えます。『スヌーピーの133面相』(KADOKAWA)で詳しく紹介しているので、ぜひご覧ください。中には、ミッキーマウスに変装したスヌーピーもいるんですよ!」
――今年はスヌーピー65周年ということでさまざまなブランドとコラボしていますが、これまでにスヌーピーとコラボした意外なものはありますか?
「一番意外なのは、NASAとのコラボレーションでしょうか。1969年に打ち上げられたアポロ10号の司令船はコードネームがチャーリー・ブラウン、そして月面着陸船はスヌーピーと名付けられています。国家プロジェクトだったことを考えると、歴史的にも他には例のないコラボレーションだと思います。また、1990年にフランスのルーブル・美術館で展示された『SNOOPY and Belle in Fashion』というドールコレクションは、世界中のデザイナーがスヌーピーとベルのための衣装をデザインした大変素晴らしいコラボレーションです。2014年には、21世紀版の新しいコレクションがニューヨーク・コレクションのシーズンに制作され、現在世界各国を回っていますが、2016年に日本でも展示される予定です」
――誕生してから65年がたち、今も幅広い世代に愛されるスヌーピーですが、愛される理由はどんなところにあると思いますか?
「かわいい姿が一番の魅力ですが、それとともに、どこかとぼけていたり、自分自身が思っているほどカッコよくない点、優等生でない性格設定も、人気のひとつではないでしょうか。そして、心に響く数々の名言が、多くの人の共感を呼ぶのではないかと思います」
――最後に、キャラクター達に関する今後の展開をお聞かせください。
「2016年春、東京の六本木に『スヌーピー・ミュージアム』が開館します。これは、アメリカのサンタローズにあるシュルツ・ミュージアムのサテライト(分館)です。シュルツ・ミュージアムの原画コレクションや、貴重な所蔵品が見られる施設です。これまでお目見えしなかったものも多数展示しますので、楽しみにお待ちくださいね」
――美術館がオープンしたら、ますますスヌーピー人気が加速しそう! 世界中から愛される「スヌーピー」、今後の日本での展開に期待したい!
文=松本まりあ