6年目のJ2リーグを9位という不本意な成績で終えたジェフユナイテッド千葉は、文字どおりの「大刷新」を敢行した。
2011年11月から約4年間クラブを率いた島田亮社長が退任し、強化部門のトップとなるゼネラルマネージャーには、昨季途中までヴィッセル神戸でチーム統括本部長と強化部部長を兼任していた高橋悠太氏が就任。チーム編成に関するニュースはシーズン終了と同時に飛び交い、「24名退団・20名加入」(1月28日時点)という大胆な“リニューアル”が話題となった。2種登録を除いた昨季の最終登録メンバー29名のうち、チームに残ったのは7名しかいない。
1月17日に行われた新体制発表会見で、就任3年目を迎える関塚隆監督は言った。
「新生・千葉としてスタートする。攻守に主導権を握り、アクションを起こすサッカーをお見せして勝利を目指したい。大事なのは、戦う集団、勝つ集団、強い集団を作り上げていくこと」
選手の大半が入れ替わったチームにおいては、シーズン開幕までの時間の使い方が例年とは異なるだろう。求められるのは、初めて同じユニフォームを着る選手たちの相互理解を促し、指揮官が掲げる戦術を浸透させること。そして、それらを特別なスピード感をもって実現すること。1月24日からスタートしたキャンプはもちろん、ロアッソ熊本(1月31日)、アビスパ福岡(2月2日)、鹿島アントラーズ(2月4日)と対戦する「Jリーグ・スカパー!ニューイヤーカップ」は、“新生”の早期成熟を実現する上で非常に重要な実戦経験となりそうだ。
昨季、関塚監督は4-2-3-1と4-4-2を併用し、後半戦は4-4-2に集中した。しかしメンバーが大幅に入れ替わった今季は、トレーニングや実戦を通じて選手たちの能力を見極め、最適な戦術を選択し直すことになる。従って、今大会における結果は重要ではない。“見極め”と“選択”をいかにしてスムーズに行い、チームとしての方向性を定めることができるか。3試合の見どころは、その一点に集約される。
数多くいる新戦力の中で特に注目したいのは、浦和レッズからの期限付き移籍で加入したMF長澤和輝だ。背番号10を託されたテクニシャンは、専修大卒業と同時に渡独。ケルンで約2年を過ごしたが満足な出場機会に恵まれず、再起を期してJリーグでのプレーを選択した。いわゆる“背番号10タイプ”のタレントは、昨季までのチームに不足していた攻撃のアイデアとなり得る。
長澤を含め、アタッカー陣は激しいレギュラー争いが繰り広げられるだろう。2014シーズンに松本山雅FCでJ1昇格の立役者となったFW船山貴之、水戸ホーリーホックに在籍した2年間で15得点を記録したFW吉田眞紀人を始め、新外国籍助選手のブラジル人FWエウトンやパラグアイ代表MFアランダなど実績あるタレントがポジションを争う。昨季からの“生き残り組”では、U-23日本代表としてリオデジャネイロ・オリンピックのアジア最終予選を戦ったFWオナイウ阿道、さらにアカデミー育ちの有望株であるMF井出遥也のさらなる台頭が期待される。
DF近藤直也やDF阿部翔平、DF多々良敦斗ら経験豊富な選手が加わった守備陣も含めて、チームは今、個々が持つ特長を見極め、戦術に落とし込む作業を急ピッチで進めている。完成までに例年以上の時間を必要とすることは明らかだが、チームの“顔”として今季も背番号7を背負うMF佐藤勇人はこの状況をポジティブに捉えている。
「チームが大きく生まれ変わったからこそ、みんなが一つの方向に向かうことさえできれば大きなパワーになると思う。今季は黒か白。失敗か成功のどちらかしかないので、結果を白に導くために全力で戦います」
毎年のようにJ1昇格候補の一角に挙げられながら、J2を舞台とする戦いは7年目を迎えた。敢行した“大刷新”は、日本サッカー界の名門クラブに漂う停滞ムードを一掃する特効薬となるか。今回のJリーグ・スカパー!ニューイヤーカップは、指揮官が言う「新生・千葉」を早熟させるための重要な第一歩となる。