新年最初の月が終わろうかというこの時期に、唐突にCIAから機密文書が大量に公開された。CIAのサイト上で今回公開された250件にも及ぶ機密情報とは、未確認飛行物体に関する調査を記述した“UFOファイル”だったのだ。
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■ウィットに富んだ解説を交えUFO機密ファイルを大量公開
1月21日にCIAのサイトで公開されたのは、CIA自ら“Xファイル”と呼ぶ、主に1940年代後半から1950年代に目撃された未確認飛行物体に関する情報である。これらの書類はCIAが1978年に集中的に行ったUFOに関する調査の過程で作成されたものであるということだ。
突然の情報公開とそのボリュームには驚かされるばかりだが、公開に際してどういうわけなのかCIAはなかなかウィットに富んだ手法を講じている。そもそもこれらの機密情報を“Xファイル”であると呼称していることからも、ちょっとした“エイプリルフール感”や、あるいは上から目線の“餌撒き感”が漂ってこないこともない。
かつての人気テレビドラマシリーズ『Xファイル』に登場するUFO肯定派のモルダー捜査官と、UFO懐疑派のスカリー捜査官にも言及しており、大量の文書の中から両名が興味を持ちそうな5件の文書をピックアップして紹介するほどの親切心(!?)を発揮している。ここまで手が込んでいると逆に一抹の疑念が生じてこないこともないのだが、ともあれピックアップされた文書は下記の通りだ。
●モルダー捜査官が歓喜する文書5
1. 1952年に西ドイツで目撃された空飛ぶ円盤
2. 1952年8月11日に行なわれたCIA支局長会議の議事録
3. 1952年にスペインと北アフリカで目撃された空飛ぶ円盤
4. 1952年に提出された空飛ぶ円盤の調査レポート
5. 1952年にベルギー領コンゴのウラン鉱山上空で目撃された空飛ぶ円盤
1952年の西ドイツの件では、直径15mもの空飛ぶ“フライパン”が当時ソビエト領だった森に着陸していくのが目撃されたということだ。近隣(ハッセルバッハ)住民で、その当日オートバイで帰宅中の父と娘が、金属のように光り輝く服を着た2人の男を目撃しており、彼らは何やら地面の上を入念に調査しているようであったという証言を残している。彼らに気づかれないように10mほどまで近づいた父親は、臨時に設けられた低いフェンス越しに、やはり直径13~15mほどの巨大な“フライパン”を目撃したということだ。
●スカリー捜査官が歓喜する文書5
1. 1953年1月14日~17日に行なわれた未確認飛行物体に関する科学諮問委員会の文書
2. 1949年3月に記された空飛ぶ円盤についてのCIA部内メモ
3. 1952年3月15日にCIA長官に提出された空飛ぶ円盤についての内部報告書
4. 1953年1月21日に開かれた科学情報収集事務局(OSI)の会議録
5. 1952年12月3日に目撃された空飛ぶ円盤に関する記録
1953年の科学諮問委員会の文書では、1952年8月のオハイオ州ベルフォンテーンや、同じく同年7月のワシントンDCでのUFO目撃例など、10の主要な目撃例と15件の目撃例が紹介され、科学者たちの間で議論が行なわれた。ちなみに主要目撃例の中には、1952年8月5日に日本の羽田空港で確認された未確認飛行物体も含まれていて興味深い。
もちろん上記の文書を含め、今回公開されたすべての文書がPDFファイル化されサイト上で閲覧、入手することができる。今後多くのUFO研究家によってこれらの文書の分析が進むことになるだろう。
■U2登場前の目撃例は超常現象が含まれている確率が高い
さかのぼること2014年末にCIAは「1950年~60年代に目撃されたUFOの大半はCIAの偵察機である」とツイッターで発言して話題になったことも記憶に新しい。この時代の“UFO”の多くは1955年にロッキード社が開発したスパイ用の高高度偵察機“U2”だということで、巡航高度1万8000mという当時の航空機としては群を抜いて高い上空を航行していたため、民間パイロットも含む目撃者の多くは“UFO”と思い込んでいたのだとCIAは説明している。ということは、U2が就航した1955年より前の情報がメインの今回の“UFOファイル”には、そのぶん説明不可能な超常現象が含まれている確率が高いということにもなる。
これらの文書を検証することにより、UFOに関する研究が進むことが期待されるが、今回のCIAの一件で思い出されてくるのは、2010年にはじまったイギリス政府による“UFO機密ファイル”の大量公開である。公開がはじまった当初こそUFO研究者を狂喜させていたが、そのうち一部からより大きな謎を永遠に封じ込めるための“印象操作”ではないのかという声もあがりはじめた。
つまり最高機密情報を隠蔽するために、重要度の低い情報を次から次へと大量に公開しているのではないかという疑惑である。CIAにもこの疑惑が持ち上がってくるのかどうかは今後の動向次第だが、ともあれ今回UFO研究が進展する素材が提供されたことは歓迎すべきことだ。
(文=仲田しんじ)
※イメージ画像:「Thinkstock」より