中国メディアの参考消息網は1日、韓国メディアを引用して、中国が大量の北朝鮮人労働者を受け入れ、最大で年間10億ドル(約1213億円)程度を北朝鮮側に支払っていると紹介した。中国は労働者受け入れにより、北朝鮮に大量の米ドルをもたらしていることになる。
労働者を受け入れているのは、主に中朝国境に近い東北3省(遼寧・吉林・黒龍江)という。同地域では景気が低迷しているが、労働者の多くが賃金水準の高い広東省など経済先進地域に行ってしまうので、労働力不足に悩む工場が多いという。
遼寧省丹東市でアパレル関係の工場経営者のひとりによると、丹東市での工場労働者の月給は平均で2843元(約5万2400円)で、広東省では5313元。そのため、2015年には約300人の労働者のうち100人が辞めて、広東などに行ってしまったという。
そのため、同年から北朝鮮労働者を受け入れ始めた。月給は人民元に換算して2000元程度で、「仕事の態度はかなり真面目。残業も簡単にさせられ、各種の社会保険も不要」と、経営側にとっては好都合なことが多く、今年(16年)はさらに増やす考えという。
東北3省で働く北朝鮮労働者は現在、3-4万人で、北朝鮮当局は年間1億4000万-1億7000万ドル(約170億-206億円)を得ているとみられている。北朝鮮南部にあり、韓国企業が操業している開城工業地区(ケソンこうぎょうちく)では、北朝鮮労働者が約5万4700人が働き、北朝鮮側は毎年8600万ドル程度を得ているとされる。
中国領内で北朝鮮は、開城工業地区よりもはるかによい効率で、米ドルを倍以上、取得していることになる。
韓国のIBK企業銀行経済研究所の専門家によると、中国領内で「非正規」に働く北朝鮮人労働者は遥かに多いという。正規の労働者を含めて総数は10万人以上になり、10億ドル分(約1213億円)の収入をもたらしているという。
中国が仮に北朝鮮への制裁を強化するにしても、北朝鮮人労働者の受け入れを規制すれば、自国内の経済に悪影響が出る可能性がある。そのため、実行には困難が伴うと考えることができる。
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◆解説◆
中国は北朝鮮における政治体制の転換を視野にいれつつ、同国を自国の経済圏に組み込むことを狙っているとの見方もある。(編集担当:如月隼人)(イメージ写真提供:123RF)