水銀による環境汚染や健康被害の防止を目指す「水銀に関する水俣条約」の締結が閣議決定されたことを受け、吉川元偉国連大使が3日未明(日本時間)、ニューヨークの国連本部に受諾書を提出した。これで締結手続きは完了し、日本は23番目の条約締結国となった。
条約をめぐっては、途上国などで使用が続く状況を受け、2010年に合意に向けた政府間交渉がスタート。条約の名称は「水俣病と同様の公害を二度と繰り返さない」との趣旨で日本政府が提案した。13年10月に熊本市で開かれた国連環境計画(UNEP)の外交会議で採択された。日本は、水俣病が1956年に公式確認されてから60年となる節目に締結の運びとなった。
条約は水銀を「世界的に懸念される化学物質」とし、水俣病の原因となった水銀を国際的に規制する内容。一定量以上の水銀を使った製品の製造、輸出入を20年までに原則禁止するほか、大気や水、土壌への排出削減、適切な管理と廃棄なども盛り込んでいる。
条約の発効には50カ国の締結が必要で、UNEPは早ければ16年中の実現を見込んでいる。日本政府としても、工業用に水銀を使い続けている途上国などに条約締結を呼び掛け、世界の水銀対策をリードする方針だ。