昔から「老害」といえば、まずは「死ぬまで権力を手放しそうにないジイサン」のことであった。そして「職場の老害」といえば、「時代遅れの価値観を若い世代に押しつけてくるオジサン」のことだった。
しかし、それが最近、日本の職場のあちこちで「30代にして早くも老害!」な社員が激増しているという。彼らは同僚にすでに差をつけられ、20代社員からも追い抜かれる一方で、新人や若手社員を相手に、日々、本質からずれまくった説教やアドバイスをして周囲を疲れさせているのだ。
まずは「30代老害」が急増している理由を説明しよう。産業医の大室正志氏が、こう語る。
「会社の中の老害は、当然、昔から存在します。彼らの多くは組織の価値観を疑わずに何十年も働き続けた結果、つまり『会社に過剰適応』しすぎた結果、社会や業界の変化についていけなくなり、50歳を過ぎたあたりから、会社の中で時代遅れの存在になってしまった。
しかし自分ではそれを認められず、若い社員に自分の価値観を押しつけてしまう…といった人たちです。まあ、『古きよき老害』ともいえます(笑)。
しかし最近増えている30代老害は、『古きよき老害』とはかなり異なる。世代的なノリもあるんでしょうけども、彼らは会社に入ってからも『ありのままの自分』を守り続け、本来は20代のうちに身につけるべき仕事の基本や会社のルールをほぼスルーしてきた。不幸なことに、当時のすぐ上の世代の社員も、反応の悪い新人のことは放置しがちだった。
そして、そのまま30代になった時、仕事のスキルも経験値もなくて行き詰まり、しかしプライドだけは相変わらず高いという、厄介な存在になってしまった。そこで承認欲求を保つために、若手社員に筋違いのアドバイスや説教をしてしまう…そんな構図です」
30代老害は、特に社内で権力を持ってるわけでもないし、大きな仕事を任されてもいない。だから実害は、しょぼいと言えばしょぼい。だが、そのダメージはだんだん職場全体に効いてくるらしい。
大手CM制作会社の社員(25歳)が語ってくれたエピソードが、その代表的な例だろう。
「僕の先輩の“36歳老害”は、新人や若手にやたらアドバイスをしたがるんだけど、その内容がイタすぎるんです! 今まで大きな仕事したことないからバブル世代社員みたいな“昔の自慢”はないんですが、代わりに『CMとは何か?』とか『おまえは“音”をわかってない』とか『10年先は』とか、まるで就活中の大学生みたいな“そもそも論”ばかり。僕たち、もうそこは前提にして働いてるんですけど、と言いたくなる。
でも先輩だから聞かざるを得ないし、相手は暇だから話長いし。ひと言で言っちゃうと『意識が高くてレベルが低い』人です」
でも、大した実害もないのでは?
「困るのが、仕事がうまく回っている自分の同僚を揶揄(やゆ)したり、上司のことを『ああはなりたくないよな』と言ったり、さらには『この会社もこのままじゃ…』とか『おまえはこのままでいいの?』といったネガティブトークを繰り返すことです。
まあ、ほとんどの若手は相手にしてないんだけど、中には感化されちゃうやつもいる。ただでさえ若い社員の数が減っているのだから、僕らの成長の邪魔をしないでほしい」
このように、「30代老害」たちは若手からウザがられ、あまつさえ職場の空気も悪くしてしまう。しかも最大の問題は、本人たちに自覚がないことだろう。
発売中の『週刊プレイボーイ』8号では、そんな「30代老害」の特徴を他の具体例とともにパターン別に分析。職場でわかっていない上司、先輩にならないためにもチェックしてみてはいかがだろう。