昨年末には、最高の警戒レベルとなる「赤色警報」が初めて発令されるなど、末期的な状況となっている中国・北京の大気汚染。さまざまな健康被害も危惧されるなか、市内でがん患者が急増していることがわかり、市民に不安が広がっている。
1月18日付北京晩報記事によると、北京市衛生委員会を中心に、北京市内の病院や北京大学腫瘍研究センターなどが行った共同研究で、北京市民のがん患者の数は毎年約3.6%の割合で増加を続けており、15年前と比べて550%の増加となっている。また、1日平均で113人ががんにかかっており、同市市民の死因は8年連続で悪性腫瘍がトップだ。
なかでも深刻なのが、肺がん患者数の増加だ。世界保健機関(WHO)が発表したデータによると、2012年に世界全体で新たに肺がんと診断された人は約180万人。このうち、実に65万人を中国人が占めているという。また、11年のある調査では、過去30年の間に中国の肺がん死亡率は465%も増加していることがわかったという。また、25年までに中国の肺がん患者は100万人に達するとする試算もある。
原因としてやり玉に上げられているのは、PM2.5による大気汚染だ。中国版のTwitterといわれる「微博」では、次のような皮肉めいたつぶやきが散見される。
「ここ数年、喫煙者は減っているのに肺がんが減らないのはどういうわけか」
「北京に暮らすことは、慢性的な自殺行為にほかならない」
「タバコを一日中吸っていたほうが、北京の空気を直接吸い込むより肺にいいのではないか」
中国で大気汚染の深刻さが増すなか、最近では日本への「越境汚染」も広がり始めており、われわれも対岸の火事ではいられない。
(文=青山大樹)