コンビニで「食品ロス」が絶対になくならない理由 | ニコニコニュース

コンビニの恵方巻きの大量廃棄がネットで話題に……(写真と本文は関係ありません)
ITmedia ビジネスオンライン

 カレーショップ「CoCo壱番屋」(ココイチ)の廃棄されるはずのビーフカツ横流し問題を受け、食品廃棄に関するニュースが増えてきたように思う。毎日のように食品を廃棄しているコンビニ関係者にとっても気になるところだろう。この問題は、店舗が直接関与しているわけではなかったが、これからは廃棄業者の選定には気を付ける必要がある。

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 今回は、コンビニの食品廃棄の現状とその問題点について考察したい。

●コンビニにおける食品廃棄と返品

 まず、コンビニの食品廃棄について説明しておこう。コンビニで廃棄処分となる商品の多くは、弁当やおにぎり、サンドイッチなどの日配商品郡だ。関係者の間でこれらは「デイリーフーズ」と呼ばれ、期限が近づいたら廃棄するというルールのもと販売期間が管理されている。コンビニは店舗ごとにゴミ回収業者と契約を交わしており、毎日処理されている。

 最近では、恵方巻きの大量廃棄が問題になっていた。節分を終え、コンビニでは発注した恵方巻きが売れ残り、廃棄処分した。その一部の写真がネット上にアップされたこともあって非難の声が相次いだ。

 また、廃棄ではなく、返品することもある。実際、店舗には何かしらの問題を含んだ商品がたまたま納品されることがある。製造ラインでの異物混入やクレームによる商品撤去などがそれにあたる。

 例えば「弁当やパンの中に髪の毛が入っていた」といった異物混入は珍しくない。店内で製造、パッケージした商品でなければ製造元に返品することになっている。

 少し前に話題になった「ペヤングソースやきそば」の異物混入問題のときは、店舗にある在庫全てをメーカーに返品した。いずれも、クレームの原因が店舗になければ製造元に返品する形をとっている。

 以上のことから、廃棄商品の横流しは店舗レベルでの介入は考えられないといえる。廃棄食品の再販が明るみに出た以上、メーカーや製造工場の管理は一層厳しくなるだろう。特にゴミ回収業者の選定にも影響を与えるはずだ。同じようなことが起きないことを信じるしかない。

 ここで、コンビニの「廃棄食品再販」の可能性を考えてみよう。多くのコンビニでは毎日、売価で1〜2万円の食品が廃棄されている。このほとんどが弁当やおにぎり、サンドイッチなど消費期限が短い商品だ。

 問題なのは、これらが廃棄される時点では「まだ食べられる」ということだ。あくまで可能性の話だが、コンビニが回収業者と結託して廃棄商品を格安で販売することも不可能ではない。

 ただ、おにぎりや弁当を再販する可能性は限りなくゼロだ。消費期限が明記されているので、廃棄する商品をパックしなおして再販するとしても、消費期限のシールやパッケージ用のラップを入手しなければならないため、現実的な話ではない。

 では、店内で製造しているファストフーズ関連の商品はどうかというと、これも再販の可能性は低い。正直、廃棄直前のファストフーズはマズくて食えたものではないからだ。「もったいないから」といってマズイ商品を売ればたちまち悪い評判が広まり、客足も減り売り上げが落ちることは容易に想像できる。コンビニで取り扱っている中でも、ファストフーズは比較的利益率が高い商品だ。その売り上げを落とすようなことは、賢明な経営者であればまずやらないだろう。

 このことから、コンビニでは期限切れの食品を再販している可能性は低いと言える。

コンビニが食品の廃棄を減らせないワケ

 コンビニの弁当やおにぎりなどの食品は、1日に3回納品される。小分けに納品することで廃棄を減らせるのでは? と思われたかもしれないが、実は小分けに納品しても廃棄量はあまり関係ない。店舗が食品の廃棄を減らせないワケは別にあるからだ。以下の図を見ていただきたい。

 分かりづらいかもしれないので少し説明しよう。当然のことながら、店側は納品のタイミングに合わせて在庫を売り切ることで「廃棄ロス」を減らしたいと思っている。

 ところが、本部の考える「ロス」は、店舗の考えとは少し違う。以前、「えっ、完売したらいけない? コンビニの物流がスゴくなった理由」という記事の中で、コンビニの廃棄ロスとチャンスロスについて述べた。本部は「在庫がない=販売のチャンスを逃している」という考えなので、常時、店舗に十分な在庫がある状態をキープしたいのだ。確かに、この考えでも計画通りに売れれば問題はない。

 しかし、実際はどうかというと、新しい弁当が入ってくれば新しい弁当から売れるという現象が起きる。食べ物はできるだけ新しいモノを買いたい。消費者なら自然に働く心理だ。このように、売れる順番が変わればその分だけ廃棄処分される。

 コンビニの弁当廃棄問題に関する記事などで、「発注の精度を上げるために最善の努力をする」という本部の回答を見かけることがある。ただし、コンビニの食品廃棄においては、発注の精度に問題があるのではなく“見せる在庫”に根深い問題が潜んでいるのだ。

 多くのコンビニチェーンでは、朝、昼、夜という来店客数のピークに合わせてたくさんの商品があるように納品時間が設定されている。それがいつしか、「いつでもたくさんあるように」と変化してしまったのだ。

 なぜこんなことになってしまったのだろうか。答えは「お客さんの要望があるから」だ。その要望に応える形で販売時間が設計されている。しかし「廃棄が出ない設計」とうたう一方で、廃棄金額が減ると、今度は「発注が足りてない。チャンスロスが発生している」と本部は言う。

 この結果、オーナーはしぶしぶ注文を増やさざるを得ない現実があるのだ。このままでは、廃棄ロスが減ることは絶対にない。廃棄を減らしたいのに減らせない……あまりに矛盾していると思うが、実はこの問題にはもう1つの発注設計が関わっているのだ。

廃棄ロスは“織り込み済み”

 もう1つの設計とは、損益計算の設計である。つまり、コンビニの食品廃棄はもともと計画されているということだ。

 店舗を運営するにあたり、売り上げ、原価、人件費、利益など、考える要素はいくつかある。まず、売り上げ。これは立地条件や店舗の規模などに左右されることもあり、店によってまちまち。売り上げの中から人件費、その他必要経費などが引かれ、利益となる。その計画内に、当然あるべき経費として廃棄ロスが組み込まれているのだ。

 そして、その廃棄ロスの金額が一定量に達しない店舗は、本部からは「売り上げを伸ばしたくないと考えている店」と烙印(らくいん)を押されてしまう。

 商品の発注納品計画をきちんと実行すれば廃棄ロスは減っていくはずだが、発注の精度にかかわらず、損益計画では廃棄ロスの予算がすでに決められているのだ。本部は本当に食品廃棄を減らそうと考えているのだろうか。実に不可思議な考え方である。

 フランスで「賞味期限切れ食品」の廃棄を禁止する法案が成立した。本部が「売り切れることが悪」と考えており以上、フランスのような法整備をしたところでコンビニの廃棄問題は絶対に解決しない。また、その考えを忠実に守れば守るほど、関係者の多くは「この仕組みはよくないよ、なんとかしようよ」と思っていてもなんとかならない話なのである。

(川乃もりや)