CES 2016に続き、2月9日にはレノボの新しい「ThinkPad X1」ファミリーが国内でも正式発表されました。その中でも、ディスプレイの圧倒的な鮮やかさに目を奪われたのが「有機ELモデル」です。
360度回転するコンバーチブル型「ThinkPad X1 Yoga」の最上位モデルは有機ELを搭載する。
すぐに液晶との違いがわかるほどの鮮やかさが特徴ノートPCのディスプレイは一般的に液晶が使われていますが、それに代わる次世代のディスプレイとして注目したいのが、「有機EL」(OLED)です。
これまでスマホやタブレットに使われてきたサムスンの有機ELパネルを、ノートPCとして初めて搭載したのがレノボの新しい「ThinkPad X1 Yoga」になります。
発表会では通常の液晶パネルを搭載したモデルを横に並べて比較。14インチ・WQHD(2560×1440ドット)の有機ELは、赤や緑の発色はすぐに違いが分かるほど鮮やかで、黒はしっかりと黒い印象を受けました。
ThinkPad X1 Yogaの有機ELモデル(左)と液晶モデル(右)を並べて比較。
カエルの壁紙はCESと同じもので、赤や緑の鮮やかさを強調したいという意図が感じられる。
液晶モデルに比べてあまりにも鮮やかすぎるため、用途によっては向いていない可能性があるものの、会場に集まった報道関係者からは次々に感嘆の声が上がっていました。
ここで気になるのは、なぜこれまで有機ELのノートPCは登場しなかったのか、という点です。サムスンはGalaxy SやGalaxy Noteシリーズのスマホに採用してきた有機ELを、タブレットの上位モデルにも拡大。現行モデルの「Galaxy Tab S2」や、CES 2016で発表した12インチのWindowsタブレット「Galaxy TabPro S」も有機ELを搭載しています。
12型のWindowsタブレット「Galaxy TabPro S」。2014年のGalaxy TabPRO/NotePROとは異なり、有機ELを採用した。
Windows 10の画面を非常に美しく描画していたのが印象的だった。
パネルの価格もこなれて「有機ELノート」流行に期待!?これに対して、ノートPCへの有機ELは長らく見送られてきました。CES 2016でサムスンが発表した、新MacBook並みのハイエンドスペックを誇る最新の「Notebook 9」シリーズでさえ、有機ELは採用されていません。
一般に有機ELは、大型化が難しいといわれています。テレビメーカーは数年前から大型の有機ELテレビを発表してきたものの、歩留まりの悪さが常に指摘されてきました。この点は価格に直結し、日本で売られているLGの有機ELテレビは55型で30万円、65型モデルで100万円程度と、液晶テレビに比べてかなりの高額です。
これまでにも放送局向けなど、業務用の機材では有機ELを使ったものはあったものの、その価格帯はノートPCとは異なる次元にあります。かつてのThinkPadなら50万円や100万円という価格もあり得ましたが、いまでは高級モデルでも10〜20万円台が期待されるところです。
レノボによれば、この有機ELの価格がようやくこなれてきたことで、製品に採用する目処が立ったとのこと。搭載機はThinkPad X1 Yogaの上位モデルに限られ、通常の液晶モデルに比べて数ヶ月遅い今夏の発売予定、価格は200〜300ドルの上乗せになるなど、かなりの特別扱いになっています。
これまでにない鮮やかな画面のノートPCを使いたい人にとっては、待つ価値があるといえます。また、有機ELの価格がこなれてきたということは、レノボ以外のPCメーカーの採用も期待できるところ。今年後半は、この「有機ELノート」がひとつのトレンドを作っていく可能性を秘めています。