ここ最近、世界中の監視カメラ映像を無断でリアルタイム表示するサイトが問題となったり、ベッキーの不倫騒動でクローンiPhoneの存在が注目されたりと、ネット社会の怖さを感じさせる話題が続いている。
だが、それ以上に怖ろしいといわれるのが「ウェブカメラ盗撮」。個人のプライベートが丸見えになってしまう危険性があり、ヌード盗撮やストーカー行為などの被害が発生している。
■「覗き見」ソフトが猛威…ウェブカメラで盗撮?ネット生配信やSkypeなどで活躍する「ウェブカメラ」だが、近年はパソコンのモニター上部などにカメラが標準装備されている機種が珍しくなくなった。便利なツールではあるが、もしこのカメラが乗っ取られて第三者に覗き見されたとしたら……。
2014年11月、イギリスで顔見知りの女性らの性行為などをウェブカメラを通して覗き見していた男が逮捕された。
男は盗撮機能のあるトロイの木馬型マルウェア「BlackShades」を利用し、ターゲットのウェブカメラを遠隔操作。3年以上に渡って毎日数時間、計14人の女性の私生活を盗撮していた。男のパソコンからはウェブカメラで盗撮した性行為やヌードの画像が多数見つかっており、女性たちが裸のままパソコンの前に座ったり、カメラのアングル上で恋人とのセックスを始めたり…そんな場面を全て保存していたのだ。
また、2013年に「ミス・ティーンUSA」に選ばれた女性がウェブカメラ盗撮によって性的ゆすりの被害に遭ったと告白した騒動も大きな話題に。犯人は元同級生の男だった。パソコンを置いていた寝室が盗撮され、さらに「言うことを聞かないとヌード画像を流出させる」と脅迫された。
2010年には、同マルウェアを使って150人以上の少女の生活をウェブカメラ越しに盗み見ていたドイツの男が逮捕されたこともあった。男はウェブカメラの危険性やデータ保護について学校に出向いて講義する「先生」であったために、ドイツ国民に大きな衝撃を与えた。
同マルウェアは違法ながら数千円で手軽に購入でき、SNSのメッセージやメールに記載されたリンク、または悪質なサイト経由で感染。乗っ取られたパソコンからさらに別の友人にもメッセージが送られる仕組みまであり、数え切れないほどの被害者を生み出した。国際的な一斉捜査や作者の摘発によって被害は一時的に落ち着いたが、今後も似たようなマルウェアが生み出され続けると推測されている。
しっかりとセキュリティ対策していれば問題ないはずだが、技術面はイタチごっこで安心はできない。結局は「カメラを無効化する」「カメラに目隠しシールを貼る」といった単純な対策がもっとも有効になっている。
■日本でも被害…「カメラの前で服を脱げ」と脅迫知らないうちに「遠隔操作ソフト」を仕込まれることで盗撮されるケースも多発。といっても違法ソフトを使うわけでなく、市販されているソフトを悪用してしまうのだ。
この手口による被害は日本でも発生している。
2014年5月、京都市の20代女性のパソコンを乗っ取って「カメラの前で服を脱げ」などと脅迫した容疑で東京都葛飾区に住む30代の男が逮捕された。
二人は交流サイト「Skypeちゃんねる」で知り合い、男が「セキュリティソフトを入れてあげる」とウソをついて、言われるままに女性は遠隔操作ソフトをインストール。パスワードも教えてしまった。
こうなればカメラだけでなく全ての権限が手に入ってしまう。男は女性のパソコンからメールの内容や画像など個人情報を入手。「(個人情報を)中国に送ったる」「俺はSkypeで何人も自殺に追い込んできた」「ヤクザの知り合いがいる」などと女性を脅し、ウェブカメラの前で裸にさせる行為などを複数回行っていた。
犯行に利用されたソフトは合法の市販品。個人利用であれば無料でインストールできるものだった。本来は遠隔地のPCサポートなどに利用されるのだが、悪用すればパソコンを乗っ取ってしまえるのである。
■スマホでも乗っ取り被害…「スマート家電」も危ない?遠隔操作はパソコンに限った話ではなく、スマホでも事件が急増。パソコンからスマホを遠隔操作できるアプリがあり、これを同じようにターゲットのスマホにインストールするのだ。
するとメールや画像の閲覧、通話の録音などはもちろん、カメラやマイクを強制起動させてリアルタイムの盗撮・盗聴が可能になる。さらにGPS機能によって現在位置までバレてしまうからタチが悪い。
実際、このアプリを悪用して元交際相手の女性の私生活をストーキングしていた男や、一方的に好意を寄せていた女性のプライベートを監視していた男が逮捕。妻のスマホに仕込んで夫が逮捕されたケースもあった。
この手のアプリはあくまで合法で「盗難対策」が目的であり、盗まれたスマホの手がかりを得たりといった使い方をする。普通にアプリストアで配布されているが、悪用が後を絶たないのが実情だ。
パソコンやスマホだけでも恐ろしいが、最近はネットに接続する「スマート家電」が流行。IoT(モノのインターネット)の時代が迫っており、ネット接続した家電にカメラが搭載されれば家中が盗撮されかねない。遠くない未来に「すべての家電製品は乗っ取られるリスクがある」という認識でセキュリティ対策に臨まなければいけない状況になりそうだ。
佐藤勇馬(さとうゆうま)個人ニュースサイト運営中の2004年ごろに商業誌にライターとしてスカウトされて以来、ネットや携帯電話の問題を中心に芸能、事件、サブカル、マンガ、プロレス、カルト宗教など幅広い分野で記事を執筆中。著書に「ケータイ廃人」(データハウス)「新潟あるある」(TOブックス)など多数