家でご飯を食べている時に、急に強迫観念に襲われ、お茶碗を持ったまま急に倒れたように気を失うこともありました
わたしたち家族には、もう何が起きているのかわかりませんでした
上記の文は、コミックエッセイ『規格外な夫婦 強迫症夫と元うつ病妻の非日常な日常』(龍 たまこ/宝島社)から抜粋したもの。夫の“まことくん”は、元々神経質な性格で、何事もキッチリしないとすまないタイプ。最初は、財布の中身を念入りにチェックする程度でしたが、やがてその行動はエスカレートしていき、
・一歩進むごとに、持ち物の確認をする
と、明らかに常軌を逸していきます。そして、ついには仕事をすることができなくなってしまうのです…。その原因は、“強迫性障害”という心の病気によるものでした。
本書は、心の病気と真正面から向き合い、克服していく夫婦の壮絶な戦いを描いた一冊です。
強迫性障害(OCD)とは、心の病気の一種で、簡単にいうと、「無意味なことだとわかっていはいるのに、やめられない」行動のせいで日常生活に影響が出てしまう障害のこと。代表的な症例としては、手洗いがやめられなくなる、「不潔恐怖・洗浄強迫」や、戸締まりや火の元が気になって何度も確認してしまう「不完全恐怖・確認強迫」などなど。
まことくんは不完全恐怖・確認強迫の症状が顕著にあらわれていたといいます。冒頭の文のように、強迫症がひどくなると、たびたび意識が吹っ飛んでいたそうです。また、家族に対しても確認行為を強制するようになり、要求に答えないと、ブチ切れて家庭内は日々修羅場。
全編コミカルに描かれていますが、夫を支え続けるたまこさんが、フッと涙するシーンにはグッときます。どんなに病気に理解があっても、支えるのってしんどいし、辛いよね、たまこさんはエラい、本当にエラいよ(涙)!
実は、たまこさんもまた、過去にうつ病を患っていた経験を持つ女性なのです。本書にはたまこさんのうつ病時代の出来事も収録されており、それもまた壮絶。慣れない子育てと、実親との確執が、たまこさんの心を突然パンクさせてしまいます。たまこさんの回復の糸口となった場所とは…?
『規格外夫婦』を読むと、心の病気についての理解が深まるとともに、強迫性障害もうつ病も、いつ自分がなってもおかしくないんだと気づかされます。強迫性障害は40人に一人、うつ病は10~15人に一人は発症するというデータもあるほどで、決して珍しい病気ではないのです。
もし自分や、家族が心の病気を発症したらどうするか? そんな視点を持ちながら読んでみるといいかもしれません。
文=中村未来(清談社)