昨年末、岸田文雄外相が電撃的に訪韓したことによって解決へと動き出した「従軍慰安婦問題」。日韓両国の国民からは「日韓合意」に反発する声も聞こえてきますが、一時期よりは大きく前進したのは間違いありません。
もちろん、今後の外交交渉で再び衝突することもあるかもしれません。外交を進める上では相手が何を考えているか、すなわち「内在的論理」の理解に努める必要があります(これはもちろん、日本政府にだけでなく韓国政府にも同じことが言えますが)。
では、韓国の有識者は慰安婦問題をどう捉え、そして何をすべきと考えているのでしょうか? 日本大学総合科学研究所の金惠京(キム・ヘギョン)准教授は著書『柔らかな海峡』で、米国内の「慰安婦少女像」問題について次のように言及しています。
「実際のところ、大学レベルで東アジアに関する講義を受けた人や、東アジアが勤務地であるなどの特段の勉強を迫られた人でなければ、アメリカにおいては慰安婦問題の前提となる多くの事実が認識されていないのである。そうした国にどれだけ像を立てても、よほど知的好奇心にあふれた人でなければ、その碑文を見たり、意味を考えたりはしない」
「つまり、日韓両国が少女像を通じて揉めている状況は、大多数のアメリカ国民にとって『よく分からない他国の出来事』でしかない」
米国内の少女像問題で騒いでいるのは日本と韓国だけで、アメリカ国民にとっては特段の関心事ではないということ。
では、当事者の日本人、そして韓国人はいかにすべきか? 金准教授は、時折、日本の政治家による「慰安婦は売春婦だった」といった類いの発言に関して、日本政府が「厳しい態度を示すことが必要となる」とする一方で、韓国側も誠意ある姿勢を見せなければならないと警告します。
「アジア女性基金の時のように、日本国内で予算を計上して謝罪が実行に移された後で、当該団体が反対し、韓国政府がそれに同調しては日本も行動が取りづらくなる」
近隣諸国との外交問題では、「いくら隣国が嫌だからといって、自国、あるいは相手国が国自体を引っ越すことはできない」といわれます。主張することは大切ですが、同時に先を読みながら外交を進めることも同じく必要であるといえるのではないでしょうか。