いまの時代、男性が眉毛を手入れしたり、スキンケア製品を使っていても驚きはありません。でも、中高年の男性上司の中には「眉毛を整えているオトコは、軽すぎるんじゃないか・・・」などと否定にみる人もまだいるようです。コンサバ上司たちは、その先にある「化粧(メイク)」を部下が取り入れたら、どんな反応をするのでしょうか?
ネット上には、実際に化粧をしている男性が「(ファンデーションは)肌がキレイに見えるので女性がお化粧をする理由がわかった気がします」と、投稿していました。その人は化粧をする理由も書いています。「青ヒゲをカバーしたい」は別として、「ニキビ跡などを隠すため」、「毛穴の開きを目立たせたくない」などの理由は、女性と同じ。
でも、男性の化粧に対しては「自然じゃない」「彼氏や旦那がするのはヤダ」といった否定的な見方もあるようです。
こうした否定的な意見もある中で、もし男性社員がメイクをして出勤してきたら、企業は社員に「メイク禁止!」といえるのでしょうか。男性社員の「メイク」とどう向き合うべきなのか、その注意点について、養父 知美弁護士に聞きました。
A. 社員に対して『化粧』の禁止・強制は、基本的にNG
大前提として、企業が、女性であろうが、男性であろうが、社員に対して『化粧』を禁止したり強制したりすることは、基本的にNGです。
「化粧」は、髪型や髪の色、服装などとともに、「身だしなみ」に留まらず、その人の個性を演出し、アピールするための手段でもあります。「化粧」をする・しない、どんな「化粧」をするかによって、時に、その人の人柄や思想さえも映し出します。
「モテたい」であったり、「ナチュラリスト」であったり、「美意識」の表現であったり、「男らしさ」のアピールだったり、「女=化粧」に対する反発だったり、傷痕やアザを隠すためであったり・・・、動機もさまざまです。
「化粧」についてではありませんが、髪の毛を短く黄色に染めて勤務したトラック運転手が業務命令違反で諭旨解雇すると通告された事例で、解雇は無効との判断を示した判例があります(福岡地裁小倉支部 平成9年12月25日判決)。
この判例は、労働者の人格や自由について制限を加える場合には、その必要性、合理性、相当性について配慮をするように求めました。
男性社員の「化粧」は、社員の人格や自由に関する事柄であって、企業がこれを制限できるのは、企業の円滑な運営上必要かつ合理的な範囲内に限られます。具体的に、どこまでの制限が許されるかは、ケースバイケースで、制限の必要性、合理性、手段方法(処分に至る手続き)としての相当性を欠くことがないよう、配慮が必要です。
【取材協力弁護士】
養父 知美(ようふ・ともみ)弁護士
大阪弁護士会 法務省人権擁護委員。堺市男女平等委員会委員。認定NPO法人WAN(ウィメンズアクションネットワークhttp://wan.or.jp/)理事
事務所名:とも法律事務所
事務所URL:http://www.tomo-law.net/