東京ディズニーリゾートが4月1日から入園料を値上げする。18歳以上の一日券の場合500円アップの7400円。値上げは3年連続となる。
運営するオリエンタルランドはその理由を、「新アトラクションやショーのリニューアルなどでパークの価値が向上したから」と説明。今後、値上げで得たキャッシュをパークに投資することで、クオリティーをさらに高めていくという。
しかし、消費者の反応は総じて冷ややかだ。入園料の他に、食事やグッズの一部も値上がりしており、4人家族が1日パークで過ごせば5万円前後の出費となる。
その一方で、最近のパークは「顧客満足度の低下」が指摘されている。例えば国内最大規模の消費者調査「日本版顧客満足度指数」(サービス産業生産性協議会)において、長年、ランキング上位に君臨していたが、2015年はトップ10からも外れてしまった。
考えられる原因の一つが「混雑」だ。アトラクションのみならず飲食店でも長時間待ちが常態化。「ピザ1枚買うのに30分以上並ぶ。椅子も空いていないから地べたに座って食べている人も結構いて、興ざめする」(長年のファン)。
オペレーション力の低下も問題視されている。昨年、ファンの間で騒然となったのが、「段ボール箱事件」だ。土産店で縫いぐるみを棚に並べず、段ボール箱に入れたまま販売してしまったのだ。
待遇変わらぬ現場は悲鳴
こうした事態を招いた要因は、アルバイトスタッフの不足だ。
長年パークで働く現役アルバイトによると、「ベテランバイトの離職率が高まっており、頭数を補うため土日に高校生・大学生バイトを増やしているものの、全く追い付かない状況」という。
背景には時給の安さなどがある。リクルートの調査によると、首都圏のアルバイト・パートの平均時給は1027円(15年12月)で、この数年で大幅に上昇。それに対し、パークの基本時給は長らく1000円(8~22時)のままだ。
「かつては千葉で時給1000円といえば高く、ディズニーで働く魅力もあったが、今はそうでもない。しかも、激務かつ最高レベルの接客が求められる。舞浜駅から10分程度の東京駅に出れば、もっと時給が良くて楽なバイトがごろごろある」(前出のアルバイト)
こうした状況を踏まえ、オリエンタルランドは昨年11月、人材強化策を発表。研修の充実や時給の引き上げを打ち出した。
ところが、「時給が100円以上上がるのは、バイトのうちほんの一部であるため、士気など上がるはずがない」(同)というのだ。
東京ディズニーリゾートは現場スタッフによる高度なホスピタリティーに支えられ、独自の進化を遂げてきた。入園料を値上げしたぶん、スタッフの充実を図り、サービスを向上させなければ、客の足は遠ざかる。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 柳澤里佳)