1991年の「バブル崩壊」から25年。右肩下がりの時代が続く中、さまざまな社会問題が噴出している。子どもの数が減り、自動車や家電が売れなくなった。特に高度成長期を知らない若者世代からは、この原因を「日本が貧しくなったから」とする声も多い。
2月19日の2ちゃんねるには「『少子化なのは日本が貧乏だから』←だれもこの事実を受け入れようとしない件」というスレッドが立った。スレ主は「そんなに日本の凋落を受け入れたくないのか」と憤っている。
出生率はバブル期にも回復しなかったはずだが少子化の原因はさまざまな視点から指摘されているが、スレ主からすればシンプルに「日本が貧乏だから」という理屈だ。日本全体を豊かにすることができないのであれば、対策の打ちようがないと考えているようだ。
「カネがないから結婚もできない」と主張することが多いネット民からは、この主張に賛同する声が続くと思いきや、反応は意外と冷ややかだ。
「はいはい政府のせい政府のせい」
「昔は貧乏子沢山いっぱいいたぞ」
「貧乏な国の方が出生率は高いのが常識だけどな・・・」
「『日本が貧乏』って何を見て言ってるのかね」
世界銀行の合計特殊出生率ランキングを見ると、上位はニジェール(7.561)、マリ(6.847)、ソマリア(6.563)、チャド(6.263)、ブルンジ(6.033)など経済的に貧しいアフリカ諸国が並んでいる。
その一方で、欧米先進諸国は軒並み2を割り込み、日本国内でも経済的に豊かな都市部の出生率は低い。「一番所得が低い沖縄が、一番出生率が高いという現実」という指摘も。時代で見ても貧しさとの関係はないという人がいた。
「子どもを大学に入れる」風潮なくなれば出生率は上がる?「そもそも出生率が2を切ったのは1960年ごろだし、その後のバブル期でも回復しなかったから、金の有無は関係ないんじゃないか?」
少子化の原因は日本が貧乏になったからでなく、逆に「個々(の市民)が贅沢になったから」という指摘をする人もいた。
「昔から若い奴は貧乏だよ。若夫婦子供の一家がアパート暮らしとか当たり前だった。それを受け入れなくなったからだろう」
豊かな社会に生まれた世代は、実家の生活水準を下げてまで結婚し、子どもを育てたいと思わないのかもしれない。この状況をこう表現をする人もいる。
「貧乏が原因じゃなくて、贅沢できなくなるのが嫌だってのが原因でしょ」
想定する生活水準を上げすぎて、他人のために自分の収入を使うことが惜しくなった。「子どもを大学に入れるってのが無くなればもっと子供が増えるんだけどな」という人もいた。1990年には25%だった大学進学率は、いまでは50%に及んでいる。
子どもを大学に行かせることができないという悩みは、かつては贅沢なものだったのだが…。貧しい時代に育ったはずの親も贅沢になり、「『正社員しか娘の相手には認めない』なんて親世代が多いから、娘も同じように洗脳されるし、息子も自分に見切りをつける」と嘆く人もいた。
「空気的な何か」の支配を解けるか生活レベルの高望みがやめられないことを「貧乏なのが問題じゃなく、心が貧相なんだよね」という人も。足りないのは経済的な豊かさより、心の余裕ではないかとする指摘が多い。
「精神的なものもあるだろうなぁ、金以前に金があっても(結婚や出産)しない人もいるし、逆に金ないのにする人もいる。精神的というか、空気的な何か」
「実際金も大事だが、どう感じて生きるかも大事だと思う。空気を変えることが出来たら日本人はかなりラクになれるんじゃないかと思うんだがなあ」
結婚や出産を「家の存続」のために義務づけられた時代と比べれば、現代は個人の自由がかなり認められるようになった。しかし他人との比較や見栄といったものからは、まだ自由になり切れていないのかもしれない。
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