日本人にとっての「おふくろの味」とは何だろうか。肉じゃが、味噌汁、カレーライス……人によってそれぞれ異なるかもしれないが、日本で長年暮らしてきたというある中国人料理人は「日本のおふくろの味」として豚汁を選んだ。
中国メディア・華西都市報は23日、日本居住歴20年あまりという、四川省成都市にある日本料理店の中国人総料理長による「日本のおふくろの味」、豚汁の作り方を紹介する記事を掲載した。記事は、豚汁が「とても家庭的な定番日本料理」であり、各家庭ごとにそれぞれ異なる味付けを持っているまさに「おふくろの味」であると説明。そのうえで、本式の豚汁レシピを掲載し、作り方を解説している。
気になる作り方の説明だが、削り節を冷水に漬けて8-12時間置く、豚バラ薄切りと大根、人参、ゴボウを用意する、白みそと削り節の出しを鍋に入れて点火し、そこに肉と野菜、さらに好みによって豆腐を入れる、沸騰したら弱火にしてアクを取る、大根が透明になったら出来上がりというもの。「昆布は水から、削り節は熱湯でサッと」というイメージのある出汁の取り方にはやや斬新さを覚えるが、日本のネット上では削り節の水出し法を紹介しているケースも散見されるので問題はないようだ。
実に素朴でシンプル、オーソドックスな豚汁が楽しめるレシピと言える。ネギやサトイモ、コンニャクも使って、ゴマ油で材料を炒めてから……と、さらなる高みを求めてしまうのはいささか野暮と言うものか。記事は「塩気のある汁からは味噌の香りが淡く立ち、大根の辛みが豚肉の脂っこさを中和してくれ、ゴボウの原木風な香りがこの簡単な料理をより完全なものとしてくれる」とその味を形容している。
だいぶ前になるが、日本人のソウルフードであるカレーライスを中国で所望したところ、薄い黄色と香辛料の味がするあんかけ丼のようなものが供されてガッカリしたことがある。日本料理というと寿司や天ぷらといったやや畏まったものが重点的に紹介される傾向があるように思える。それは悪いことではないが、今回の豚汁のように気取らない、日常的に食する「日本のおふくろの味」が中国でちゃんと紹介されているのを見ると、なんだか豚汁を一口すすった後のような「ほっこり感」を覚えるのである。(編集担当:今関忠馬)