オードリーがやらかした! 昼の情報番組『ヒルナンデス!』の向こう側 | ニコニコニュース

オードリー
日刊サイゾー

 オードリーが、やってしまった。『ヒルナンデス!』(日本テレビ系)の終盤、スタジオでは視聴者プレゼント用に家具メーカーから提供された椅子が、オードリーの2人によって紹介されていた。その椅子は30年以上売れ続けているロングセラー商品で、おしゃれなデザインが人気。何より、630万回以上のテストをクリアした、耐久性に優れたアームチェアだという。

 そこでオードリーは、果たして本当に壊れないか試してみることに。春日俊彰がその椅子に体重を預けるように飛び跳ね始めると、若林正恭も悪ノリ。全体重が椅子にかかるように春日の肩を押さえつけ、さらに負荷をかけた。春日が体を揺らすこと6~7回。「バキッ!」という大きな音とともに椅子が壊れ、春日が倒れ込んでしまったのだ。

 スタジオには悲鳴上がる。カメラは慌てて司会の南原清隆らがいるほうに向けられるが、一同唖然。わずかな間の後、すかさず水卜麻美アナが頭を下げ、フォローした。

「大変申し訳ありません。使い方は正しく守ってください」

 若林が青ざめながら「壊れましたぁ」と言うと、たまらず小島瑠璃子が身をくねらせて爆笑、南原はやや顔をひきつらせながら笑った。CMが明けてもスタジオは「やってしまった」という、ある種、異様な雰囲気。「謝ってくださいよ」と南原が春日に振ると、普段よりややかしこまった様子の春日が言う。

「普通あんな使い方しないですからね。バカヤロウですよ、わたしはね!」

 そして、若林は「でも……よく見たら、壊れてなかったですよ」と、とぼけてみせた。メーカーのご厚意で提供されたものを壊してしまうという大失態。おそらくオードリーは大目玉を食らうことになっただろう。

 だが、視聴者からすると、めったに見られない生放送ならではのハプニングに胸が躍る面白さだった。どこか、80~90年代にとんねるずなどのイケイケの芸人たちが、「やってはいけないこと」を無視して暴走し、胸をときめかせてくれたことを思い出した。

 実は、オードリーがメチャクチャやっているのは、何も今回に限ったことではない。『ヒルナンデス!』水曜日の人気コーナー「ドケチ隊が行く!激安店ツアー」では、毎回ハチャメチャだ。特に若林の自由で悪ふざけあふれる進行は、目を見張るものがある。それに呼応して、春日もやりたい放題。ふざけまくりなのだ。このコーナーはそのタイトル通り、激安店に行き、ドケチなメンバー(=ドケチ隊)が、いかにお得な買い物ができるかを競うというもの。メンバーは春日のほか、松本明子や重盛さと美。そのほか、ゲストが加わるときもある。

 そこで、オードリー同様、いや、それ以上にはじけているのが松本明子だ。松本といえば、やはり若林司会の『しくじり先生 俺みたいになるな!!』(テレビ朝日系)で「自己中で大問題ばかり起こしちゃった先生」として登壇し、「寮では全裸で生活していた」「よかれと思って、放送禁止用語を連呼した」「先輩の衣装をフリマで売った」「寝ている息子を密かに舐めた」などヤバいエピソードを語り、大きな話題になったばかり。だが、松本のヤバさは、すでにこのコーナーで早くから見せつけていた。

 たとえば、「ドケチ」ゆえ、下着もギリギリまで買い替えないという松本は、若干破れても使うと言いだす。さすがにそんなわけないと若林らが疑うと、今日も破れたブラジャーだと言い、若林を奥に連れて行き、実際にそれを見せるのだ。若林は、あまりのことに身をくねらせて爆笑。その横に、さも当たり前のような表情で立つ松本。毎回のようにそんなわけのわからないノリの、全編コントのような展開が続くのだ。

 恒例といえば、松本の「全力モノマネ」もすごい。毎回、「ドケチ隊」にモノマネを披露させ、合格なら試食などができるという流れがある。通常であれば、ここでオチ要員に使われるのは春日だ。だが、「ドケチ隊」では違う。意外と芸達者な重盛が割とちゃんとしたモノマネで「合格」すると、今度は春日。微妙なモノマネでスタジオが苦笑する中、ギリギリ「合格」。そして、最後に披露するのが松本だ。彼女はエド・はるみや永野、ですよ。、鳥居みゆき、天津木村といった抜群の人選の芸人たちのネタを全力で完全コピーするのだ。見たことがない人は、それがどれくらいのものかわからないかもしれないが、軽く見積もっても、その想像の倍以上の全力さだ。長きにわたってバラエティ界に生き続ける底力を見せつけるその全力さは、まさに圧巻。すごみすら感じさせる。だが、若林は食い気味に判定する。

「不合格!」

 とにかく、このコーナーずっとハチャメチャだ。

 いま、お笑い系の番組は、深夜を除けばほとんど見ることができない。特にお昼となれば、情報系番組ばかりだ。だからよく「お笑い芸人が本領発揮できる場所がない」などと言われる。だが、実はそんなこともないというのは、この「ドケチ隊」を見ればよくわかる。情報系番組は裏を返せば、しっかり情報さえ伝えれば、あとはある程度、自由が許されるもの。その制約の中で、いかに全力でふざけられるか。そこが芸人の腕の見せどころだ。冒頭のハプニングが単に「やらかした」というものではなく、心底笑えるのは、ルールの中で全力でふざけているからだ。

  最初からノールールでやりたい放題では面白くない。そのルールを全力ゆえに思わず踏み出してしまったから面白い。情報番組の“向こう側”には、お笑い芸人にとっての金脈が眠っているのだ。


(文=てれびのスキマ http://d.hatena.ne.jp/LittleBoy/)