【祝!本屋大賞ノミネート】芸能界注目度No.1小説『教団X』とは? 作者・中村文則さんにいろんな質問をぶつけて見えた“素顔” | ニコニコニュース

「最高傑作を書こう、と決めていました。中村文則の代表作と呼ばれるものに必ずしよう、と」

【画像あり】詳しくはダ・ヴィンチニュースへ

 インタビューの中で、中村文則さんは『教団X』についてこう語った。確かに、いまだかつて、こんなにも様々な人の心を揺さぶった小説があっただろうか。プライベートでも親交がある綾野剛はこう語る。


「一気に読むと、脳内カオスが起こるんです」。「あえて142ページで読むのを止めたんです。『これ以上読んだらヤバいかもしれない』と、自分が正常を保ちたい観念に駆られてしまったんです」

 この小説の衝撃をもっとも世の中に広めたのは、芸人たちだった。フルーツポンチ・村上とその興奮を共有した又吉直樹は、テレビ朝日系バラエティー「アメトーーク!」に「読書芸人」として出演した際に、「10年に1度あるかないかっていう小説」と大絶賛。オードリー・若林も「作家さんに“オススメの小説は?”と聞くとみんな決まってこの本を挙げる」として『教団X』の魅力をアツく語った。

 この放送をきっかけに、衝撃は加速度的に拡散していく。三四郎・小宮浩信は又吉に憧れてこの本を読み始めたことをブログで明かし、東野幸治もInstagramで「(長編だけれども)かなりエロかったので、無理なく読み終えることが出来ました!」とコメント。

 俳優の瑛太も、忙しい撮影合間をぬってこの本を読んでいることを告白した。

 さらに、ラジオ番組「 鈴木敏夫のジブリ汗まみれ」(TOKYO FM)では、スタジオジブリ鈴木敏男が、この小説についてこう評した。

「映画でいうと、ある時代まで、アクションだろうが、恋愛だろうが、テーマが“貧乏の克服”だった。ところが、日本が高度経済成長を超えて豊かになった時、次に“心の問題”をどうするかという話になった。この小説を読んだ時に、そういうののある先を示してくれているなって」

 これに対し、ドワンゴ会長・川上量生も「これは、現代の宗教ですよね」と頷く。


中村さんはインタビューで、

「まずは何も構えず本を開いてみてほしい。『次に何が起こるか分からない』極上の物語にのめりこまされ、ページをどんどんめくらざるを得なくなるはずだから。その過程で、自然と、『人間とは何か?』『世界とは何か?』という問いが刷り込まれていくはずだから」

 と語っているが、『教団X』とは一体どんな小説なのか。まだ読んでいない人のために、ここで本書のおおすじを紹介しておこう。

 舞台は、2つの対立する宗教団体。自分の元から去った女性・立花涼子を探して、楢崎はある宗教団体の門を叩く。そこは、アマチュア思想家を名乗る松尾正太郎が作り上げた宗教団体。だが、楢崎の探している涼子は松尾の団体と対立するカルト教団の信者であるらしい。その宗教団体は、信者にセックスを与え続けることによって、信者を洗脳していく。「教団X」とも呼ばれる、そのいかにも怪しげな団体に楢崎は次第に惹き付けられていく。神とは何か。運命とは何か。絶対的な光と闇、極限の物語に引き込まれ、圧倒され続ける。

 芸能界への広がりとともにブームを巻き起こした『教団X』は、全国の書店員が選ぶ「2016年本屋大賞」にもノミネートされている。中村さんが同賞にノミネートされるのは2度目。ついに受賞なるかとその動向にさらなる注目が集まっている。

  こんな衝撃的な作品を描く、中村文則さんは一体何者なのだろうか。こんなにも多くの人を魅了する作品を中村文則さんはどうやって作り出したのだろうか。ダ・ヴィンチニュースは、Twitterなどで中村さんへの質問を一般公募。小説の内容からプライベートまで、あらゆる質問をぶつけてみた!

●本屋大賞ノミネートへの思い、又吉さんへの思い…

【Q1】本屋大賞ノミネートを知った時どのように思いましたか?


【A】ああいうタイプの本を選んでくれたことを嬉しく思いました。候補作を見ると僕だけ浮いてる印象ですけど、色んなタイプの本があった方がいい、という、本屋さんの多様性を感じられて感謝でした。

【Q2】「2016年本屋大賞」には又吉直樹さんの『火花』もノミネートされています。ライバル視はしていますか?笑


【A】純文学作品で入ってるの、僕と又吉君だけですので、むしろ応援ですね。彼が芸人として売れる前から知ってるので、おじいちゃんが孫を見るように見ています。年齢は3歳しか違わないんですけども。なんか、知り合った人が後に売れていく傾向にあります。不思議ですね。

●どうやって作品が生まれるのか…中村さんの日常に迫る

【Q3】執筆活動をされる際の1日のスケジュールを教えてください。一体どういう時にアイデアが生まれるのでしょうか。


【A】昼頃起きて、ユーチューブを見ながらご飯を食べて、散歩をして、執筆して、散歩をして、執筆して、寝る前にメールをまとめて返信して、眠くなるまで本を読む、です。酷い。アイデアはいつも突然です。書きながら閃くことも多いです。

【Q4】では、休日は何をして過ごしていますか。ご趣味があったら、教えてください。


【A】散歩、読書、音楽(聴く)、野球観戦(テレビ)。散歩以外、インドアの極みです。

【Q5】執筆活動をされる日も休日も「読書をする」とのことですが、中村さんはどんな本を読むのでしょうか。「本棚はその人を映す鏡」などと言いますが、本棚に並ぶ本のジャンルの割合を教えて下さい。


【A】純文学6、ミステリー系1.5、学術・ノンフィクション系1、漫画1.5ですかね。

【Q6】「自分の人生を変えた」と思える本を教えてください。


【A】太宰治『人間失格』、ドストエフスキー『地下室の手記』、『カラマーゾフの兄弟』、小説の方法論としては、ジッドの『背徳者』(の序文がヒントに。石川淳訳)。

【Q7】漫画も読まれているのでしょうか。もし、読むならば、人生で一番ハマった漫画を教えて下さい。


【A】つげ義春さんの漫画です。

【Q8】鞄の中身もその人を表すものだと思います。(中村さんの作品でも『銃』や『遮光』では、主人公が何かを持ち歩いているという共通点がありました)。中村さん自身の鞄の中には、何か変わった物は入っていますか?


【A】読者さんからもらった、四葉のクローバーの押し花が入ってます。一時期、四葉のクローバーのプレゼントを多くもらいました。不幸だと思われてたのだと思います。外れてはいないけども。

【Q9】2ヵ月くらいまえに歌舞伎町の中華料理屋さんで中村さんと西さんがお食事しているのを偶然お見かけしました(その他に3名ほどいらっしゃいました)。ファンがそのような場にでくわした場合、話しかけたりしてよいものでしょうか?


【A】もちろんいいですよ。ちなみに、そこに同席していた素敵なアメリカ人の女性は、僕の「去年の冬、きみと別れ」「銃」を英訳してくれたアリソン・マーキン・パウエルさんで、ちょうど来日してたのです。

【Q10】いろんな方と親交がある中村さんは、小説の中でもあらゆるタイプの女性を描いています。そこで気になったのですが…ズバリ、中村さんはどんな女性がタイプなのですか。


【A】僕がSなので、できればMの人がよいです。しかしながら、自分はSだ、と思ってる女性がMになる瞬間というのもあり……これ、(笑)マークをあえて入れずに書いてるので、変態みたいですね。ちなみに、Sでも痛いことはしないですよ。SはサービスのSでもありますから。あ、言い訳するほど変態ですね。やめた方がいいですね。

【Q11】今の世の中、何かと「不倫」について話題となっています。もしも、「不倫」に関する本を出すとしたらどのようなタイトルをつけますか?


【A】エロいタイトルつけますかね。『教団SEX』とか。『何もかもエロエロな夜に』とか。嘘ですごめんなさい。

●小説家になるまでどんな暮らしをしてたの?その過去に迫る

【Q12】小説家になる前、フリーターをしていたそうですが、一体どんな生活を送っていたのでしょうか。フリーター時代のことを教えてください。


【A】一食は200円以下で、時給は850円で週4日のコンビニのアルバイトと、あとは、単発のバイトをしてました。それ以外の時間は全部、小説を書くか、本を読むか、という生活です。

【Q13】中村さんは昔、ハードロックバンドをやっていて奇抜なファッションをされていたそうですが、これは質問ではなくお願いになりますが、その時の写真が残っていれば、ぜひ見せて下さい。


【A】写真はないので、描写します。髪は赤、タンクトップに、鉄の鎖、革のレザーパンツ、ギターは赤紫のフライングV、肩に十字架のタトゥー(実はシールという情けなさ)。素敵な時代です。

【Q14】もしも、小説家になっていなかったら、どのような生活を送っていたと思いますか。


【A】法務教官(少年院の先生)の試験に一応合格していたので、その仕事についてたと思います。

●中村さん自身が思う『教団X』の魅力

【Q15】「本屋大賞ノミネート」をきっかけにこれから『教団X』を読むという人もいると思います。最後に、まだ『教団X』を読んでいない方に、その魅力を140字で教えてください。


【A】性描写の理由は、国の権力が増大すると性の自由への抑圧が起こる、というフロイトの考えからきています。なので、権力と真逆のベクトルの教団内ではああなってます。政治的にはリベラルな小説ですので、嫌がってる方々もいるみたいですが、大切なことを書きました。この小説が今広がってることは、意義……

 中村さんは2014年、『掏摸』でアメリカの文学賞「デイビッド・グーディス賞」を日本人として初めて受賞。同年には、アメリカのミステリー雑誌『Mystery Scene』137号(2014年 Holiday号)の表紙を飾るなど、海外でも多くの支持を集めている。前出のラジオ番組でも、「『教団X』は最初から世界に向けて書いたるというのがあった」と語っていた中村さん。すでに『教団X』の翻訳出版は決まっているという。今後その衝撃は、世界へと広がっていくだろう。中村さんのいう通り、この小説が今の時代に広がっていることは、とても意義があること。『教団X』をまだ読んでいない人はぜひとも読んでほしい。何がここまで多くの人の心を掴んだのか、自分自身で読んでぜひとも感じ取ってほしい。

文=アサトーミナミ