口酸っぱく「宿題しなさい!」と言っても、コッソリと携帯ゲーム。もうほんとにイライラするなァ――そんな経験のある世のお母さんは多いはず。バイオリニストの高嶋ちさ子(47才)はそこで“バキッ”とやって、話題になっている。
東京新聞(2月12日)に掲載された連載コラム「子育て日記」によると、高嶋家は2人の子供に平日のゲームを禁じていたが、ある金曜日に高嶋が帰宅すると、小学3年生の長男が宿題をやらず携帯ゲームに興じていた。激怒した高嶋が二つ折りのゲーム機を両手でバキバキと折ると、長男が悲鳴を上げた。続けてチェロの練習をサボった次男(6才)のゲーム機もバキバキと破壊し、その写真をコラムに掲載した。
高嶋は今年1月にも《怒り狂ってまた(ゲーム機を)折りそうになった》とツイート。ゲームを巡る息子たちとの長い闘いがあったようだ。
そんな“過激”な子育てに各方面から意見百出。著名人からも「いい教育をしている」という声や、「ゲーム機を一生懸命つくっている人からしたら、いい気はしない」という意見が出た。また高嶋に対して「ヒステリックなだけ」「暴力や恐怖で子供を押さえつけている」という声が出ると、それに対し「あんなに純粋で美しい音色を奏でられる人に悪い人がいるわけがない」という評価まで聞かれた。
教育学が専門の阪根健二・鳴門教育大学大学院教授が指摘する。
「今は『褒めて伸ばす教育』が全盛ですが、高嶋さんのように叱って伸ばす方法も、その子供に合っているなら、なんら問題はありません。高嶋さんのお子さんは“ゲーム機が壊れたおかげで算数のテストで満点取れた”と自慢しているわけで、嫌がっているというより、楽しんでいるようにさえ感じます。子供によって“ヤル気スイッチ”の押し方は千差万別なんです」
子育てコラムを読むと、他にも「ちさ子流」の一風変わった子育て法が満載だ。たとえば、運動会の駆けっこでは「1位じゃないと家に入れない」と宣言し、長男が3位になると人目を気にせず怒り狂った。次男が「ママー! 今日お兄ちゃん、家に入れないの?」と尋ねると、校庭で「当たり前だよ!」と叫んだ。
「“1番にならないといけない”という言葉は近年、教育機関ではあまり使われなくなりました。“家に入れない”は言いすぎですが、社会人になれば、結局は厳しい社会が待っている。順位付けをしない教育は、現在の自分の位置を把握できなくする上に、社会を生き抜くたくましさを欠如させる心配もあります」(阪根教授)
また、自身のコンサートで6才の次男と共演する当日、朝から咳が止まらない次男を病院に連れていくと「ぜんそくの発作が起きているので、すぐ入院を」と医師に言われた。それでも「何となくいけそうな気」がして、周囲の反対を押し切り舞台に立たせた。終演後、次男は血中酸素濃度が低下し、5日間の入院に。
「たしかに高嶋さんの教育方針の“行きすぎ”な点は否めません。それでも、そこには親と子の濃密で血の通った会話が感じられます。最も間違った教育は、コミュニケーションをほとんど取らず、子供の気持ちも聞かずに、親本位で何事も決めること。そこだけは、お母さんたちに気をつけてもらいたいです」(阪根教授)
高嶋の「怖いママの効用」と題したコラムで、長男はこんな名言を残している。〈「ぼくはどこに行っても怖くない。誰に怒られても怖くない。ママより怖い人はいないもん」〉。なるほど、たくましく育っている。
※女性セブン2016年3月10日号