「夫(or妻)が浮気したので、子どもたちの親権は私がもらって、離婚します!」。そう聞くと、納得してしまいがちですが、実は、法的には「夫(or妻)が浮気した」という事実と、「子どもたちの親権をどちらの親がもつか」は、わけて考える必要があります
結婚5年で2人のお子さん(3歳、1歳)がいる女性から、弁護士ドットコムの法律相談に「私が浮気して離婚することになったんですけど、親権をもらえるって本当ですか?」と質問が寄せられました。
夫は子育てにほとんど協力せず、共働きなのに、女性が家事育児のほとんどを負担。夫婦仲は険悪になっていたそうです。男友達に相談するうちに、つい何度か関係をもってしまったといいます。浮気が発覚してからは、彼との関係を絶ち、今後も会うつもりはありません。
夫は「お前が浮気したんだから、徹底的に争って、子ども2人の親権はもらうからな」と強気な態度。離婚理由が女性自身にあることから、親権をとることはあきらめていたと言います。
しかし最近、友人から「子どもが小さいなら、有責配偶者(離婚理由を作った側)でも親権はもらえるんだよ!」と教えてもらったことから、相談を寄せたそうです。親権は、どのように決まるのでしょうか? 原口未緒弁護士に詳細な解説をしていただきました。
A. 不倫をしても、親権者になれる可能性は充分あります。
ご相談者は、「不倫をした自分は、娘の親権者になれないのでは?」と不安に思っているようですね。
まず知っておいていただきたいのは、「不倫をしたこと」と「子の親権者になること」は別問題だということです。不倫をしたからといって、絶対に親権者になれないわけではありません。
子どもの親権者は、離婚をする際に夫婦の話し合いで決めることができます。話し合いで決まらない場合は、家庭裁判所に調停を申し立て、それでもダメなら家事審判に移行し、裁判官に親権者を決めてもらいます。
親権者の判断にあたっては、「子の福祉」が重視されます。簡単に言うと、「子どもにとって、どうすることが一番幸せか」という点が重要なのです。
ご相談者は、子どももよくなついているということです。子どもの立場にたって考えると、これまで主に自分の世話をしてくれて、一緒にいる時間が長かった親といるほうが安心できますよね。
裁判所では、虐待などの問題が特にないかぎり、「現状維持」を優先させます。そのため、主に育児をしていた親の方が、親権者として認められやすい傾向があります。日本では、母親が育児を担っているケースが多いので、子どもが幼ければ幼いほど、親権者を決める際には母親の方が有利と言われています。
今回、ご相談者がしてしまった「不倫」は、民法で定められた離婚原因である「不貞行為」にもあたり、社会的に許されない行為です。今回のケースでは、セックスレスだったということですので、夫にも落ち度があります。ではもし、夫が、自分に何の落ち度もないのに不倫をされていたとしたらどうでしょう。「不倫をするような母親に子どもを預けられるか!」と腹立たしく思うかもしれません。
しかし、子どもにしてみれば、親が不倫をしているなんてことは通常わからないでしょうし、十分な愛情を与えて育ててくれているのなら、その親と離れたくないと思うでしょう。親権者を決める際は、あくまでも子どもの立場にたって、子どもの幸せのためにどうすべきかを基準に考えることが大切です。
【取材協力弁護士】
原口 未緒(はらぐち・みお)弁護士
東京護士会所属。ココロもケアするカウンセリング離婚弁護士。コーチング・カウンセリング・セラピーなどをもとに、調停・裁判をしないで円満離婚を実現する、『幸せになるための離婚』を提唱しています。
事務所名:弁護士法人未緒法律事務所