連合、全労連、全労協などの垣根を越えて15の労働組合が参加した「最低賃金大幅引き上げキャンペーン」が2月27日、東京・新宿駅東口広場でアピール活動を行った。
この日集まったのは、下町ユニオンや首都圏青年ユニオンなどの労組関係者や個人合わせて70人(主催者発表)。強い風が吹き付ける中、午後2時から1時間、「時給¥1500 これが常識。」「働きすぎはもう終わりだ」と書かれた大きな赤い横断幕を掲げ、通行人に訴えかけをしていた。
フルタイム勤務でも年収279万円「1500円は贅沢なのか?」キャンペーン委員会の事務局を務める首都圏青年ユニオンの河添誠さんは、「1500円は高いのでは」という声を耳にするとしながら、決して高望みではないと訴える。
「最低賃金が1500円になっても、(年間所定労働時間を1860時間とした場合、フルタイムで働いても)年収にすると279万円。これは贅沢な要求なのでしょうか? これくらいの賃金が欲しいのは、普通の要求ではないでしょうか」
もし政府が掲げる「同一労働同一賃金」が非正規の労働条件を本当に改善することを目指しているのだとしたら、最低賃金が700円台の地域もあるため、せめて今すぐどこでも時給1000円にするのが当然とした。
「逆に言えば、いくら言おうが最低賃金1000円を実現できないのであれば、それは全く人を騙くらかしているようなものだ」
アピール活動には、土曜出勤日の半日休暇を取って参加したという正社員もいた。江東区の印刷会社で働く30代の男性と20代の女性は、同じような若手正社員からも切実な声が上がっているという。
「いまの給与では、とても働き続けられない。未来への展望が持てない」
要求する賃上げ幅は月4万5000円だが、これは時給を1500円として計算した水準だという。「(新入社員の)19歳から1500円になれば、その上の年代はもっと賃上げが望める。正社員の立場からも、最低賃金の引き上げを求めていきたい」と語っていた。
共働きの世帯年収が600万円なら「やっと子どもを育てられる額です」非正規労働者も声を上げた。新潟県から駆け付けた40代の男性は、時給800円のカフェで働いている。新潟県の最低賃金は731円であり相場としては悪くないが、体調がよくないためフルタイムで働けず、ワーキングプアだという。
新潟の現状を考えると、時給1500円は高すぎるかもしれないとの思いもあるが、共働きの世帯年収にすると約600万円になる計算だ。「それでやっと子どもを育てられる額ではないでしょうか」と訴えた。
人生には病気になったり、ブラック企業に勤めてしまったりといった落とし穴も色々なところにあるが、最低賃金が低いことでそこから抜け出せにくくなっているという。
「すぐ手近にある仕事の給料が低いと、落とし穴に落ちてしまったまま(になりがち)。落とし穴から這い出せるように、どうすればいいか考える必要がある。その一つが最低賃金1500円です」
男性にスピーチ後の感想を求めたところ、「分かってもらうのは難しい。自分がその状況にならないと」と語った。男性自身、大学院を修了後に高校の正規教員だった時期もあるが、今の状況に陥って初めて分かったこともあるという。
アピールに関心を持って立ち止まる人の姿もだが、通行人の中には、アピールに関心を持つ人もいた。マクドナルドのキャラクターに扮したメンバーが声をあげると、立ち止まって写真を撮る人も多く見られた。
河添さんによると「何をやっているんですか?」と声をかけられ説明の機会を得るなど、手応えはあったようだ。「賃金が低くて困っている人はたくさんいるはず。ただ、その声のあげ方が分からない。全体の底上げをしていきたい」と決意を表していた。
最賃引き上げに対しては「雇用の悪化をもたらす」と批判する人もいる。一方、経営共創基盤CEOの冨山和彦氏は、労働力人口の8割をサービス産業が占める現状では「(産業の)空洞化リスクが小さく、労働供給不足時代では失業の懸念が少ない」として、その有効性を主張している。
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