自分の容姿について、妙に自信ありげな人がいる。キメ顔で写真に収まっている人を見ると、思わず「ナルシストめ…」と心で毒づいてしまうのは筆者だけではあるまい。
程度にもよるけれど、容姿に自信を持っていることが透けて見えると、やはりどこか滑稽に見えるもの。…もっとも、そう考えてしまうのは、十人並みのルックスで生まれてきた者のひがみだろうか?
「それは意外と、他人のことを言えないかもしれませんよ。人は誰しも、無自覚に自分の顔には良い点数をつけていることを示す、心理学的なデータが存在するんです。自分としては謙虚なつもりでいても、実物以上の評価を自分の容姿に与えている可能性は低くありません」
そう語るのは、心理学者の内藤誼人先生だ。これは次のような実験で明らかになっているという。
「米シカゴ大学の心理学者ニコラス・エプリー氏は、被験者となる大学生男女の顔写真を撮影し、CG処理を施して、一般的に魅力的だとされる顔に1割近づけたもの、2割近づけたもの…というふうに、5割増までの5パターンを作成しました。同様に、醜いとされる顔に近づけた写真も5パターン作成。元のオリジナルを含めて計11枚の顔写真を被験者に見せて、本人に“どれが本当の自分の姿か?”とアンケート調査を行ないました」
ちなみに魅力の判断基準は、あらかじめ膨大な顔写真のサンプルをもとに、一般的に魅力的と思われる顔と、醜いとされる顔の傾向をデータ化したもの。その結果、興味深い事実が浮き彫りになったという。
「回答を集計したところ、もっとも多かったのは“魅力1割増”の自分の顔写真を選んだ人で、これは全体の全体の35%にのぼりました。次いで、オリジナルと “魅力1割減”の写真を選んだ人がそれぞれ20%ほど。その他の被験者は、ほとんど実物よりも魅力が割り増しされた写真を選んだそうなのです。この結果からすると、人は自分の容姿を過大評価する傾向があることは否めません」
内藤先生によれば、“魅力3割増”の写真を選んだ人も10%ほど存在しているという。これはさすがに極端にしても、謙虚な人間でいるためには、日頃から自己評価を1割減らして考えておくのが無難なのかも…。
※当記事は2016年02月29日に掲載されたものであり、掲載内容はその時点の情報です。時間の経過と共に情報が変化していることもあります。