先月28日、北海道新冠町朝日の「競優牧場」で、放牧中の競走馬2頭が銃で撃たれ死んでいるのが見つかった。馬の死体近くには空になった薬きょうが落ちていたそうだ。
競優牧場は、1960年代後半に名馬・タケシバオーなどを輩出した由緒ある牧場。最近でも一昨年のダービー3着馬マイネルフロストを生産するなど、渋く活躍馬を作り出している。
そんな名門牧場で起きた、生産競走馬の"死"。しかも銃撃を受けての死亡というのだから冗談にもならない。「サラブレッド銀座」と呼ばれ、多数の牧場がある新冠町では大きな不安と恐怖が広がっている。
撃たれた競走馬は1歳。人間でいえば幼稚園か小学校低学年程度らしく、一番人手がかかる時らしい。基礎体力をつけるため、夜間放牧を敢行することもあるという。その夜間放牧の最中に銃で撃たれたということだ。死体が発見される夜、従業員が銃声のような音を聞いたという情報も。
放牧中ということは、死亡した競走馬は競優牧場の「敷地内」にいたということ。つまり「敷地内に入らなければ」撃つことはできないということになる。空の薬きょうが具体的にどこに落ちていたのかは明らかになっていないが、おそらく撃った人物は、牧場の敷地内に入って撃ったということではないか。
敷地外であれば、道有林内で日高エゾシカを狩猟することも可能なのだろうが、夜間の発砲は禁止されている。地元の人間であればその事実を認識しているはずで、馬と鹿の区別もつくだろうということである。ということは、これは誰かが意図的に競走馬を"射殺"したという考えが、どうしてもしっくりきてしまうのだが......。
2002年にも、男性2人が放牧中のサラブレッドを誤射して死亡させてしまい、逮捕されたという事件があった。犯人は最終的に3,700万円もの賠償金支払いを命じられている。
これ自体は、ハンターという趣味によって引き起こされた"自業自得"なものだが、今回の出来事とは本質的に異なる面がある。現場状況の情報から察するに、「故意に馬を撃った」という可能性がどうしても浮上するからだ。
同じ新冠町には、G1競走6勝で今年から種牡馬になったあのゴールドシップのいる「ビッグレッドファーム」もある。他の牧場に危険が及ぶ可能性も否定はできない。早くこの一件が解決することを願うばかりであるし、こんな悲しすぎる出来事があっては、例年以上に盛り上がる16年の競馬をファンとしても楽しめないだろう。