若い女性たちがアダルトビデオに強制出演させられているという実態を約半年かけて調査したNPO法人ヒューマンライツ・ナウは3月3日、東京・霞が関の弁護士会館で記者会見を開き、調査結果を発表した。同団体の事務局長をつとめる伊藤和子弁護士は「女性たちは意に反して性行為を強要、撮影されて、奴隷のような状況に追い込まれている。深刻な人権侵害だ」と訴えた。
今回の調査に協力した支援団体「ポルノ被害と性暴力を考える会」などによると、昨年1年間にアダルトビデオ出演に関する相談は81件にのぼったという。ヒューマンライツ・ナウのウェブサイト上で発表された調査報告書には、法外な違約金を請求されてアダルトビデオへの出演を強要されたケースなど10の事例が紹介されている。
ヒューマンライツ・ナウは、調査結果にもとづいて、アダルトビデオのプロダクションやメーカーなどを監督する省庁の設置や、不当・違法な勧誘の禁止、女性の意に反して出演させることの禁止、禁止事項に反する場合の刑事罰などを盛り込んだ提言も報告書にまとめた。今後、内閣府など関係省庁に対して提言する予定だ。
●「AVの需要についても社会問題にしなければならない」報告書の事例にあがった女性たちは、スカウトから「モデルにならない?」と声をかけられたり、撮影直前までアダルトビデオだと知らされないといった状況で、契約書や違約金などをたてに出演を強要されていたという。
ヒューマンライツ・ナウの副理事長をつとめる後藤弘子・千葉大教授は会見で「若い女性たちは、社会的な力が足りないところに漬け込まれて、食い物にされている」「このような人権侵害には、刑事罰をもってのぞむ必要がある」と強調していた。
「ポルノ被害と性暴力を考える会」世話人の宮本節子氏は「これだけ多くの被害者が生まれるのは、(アダルトビデオの)需要があるからだ。日本社会には、需要を喚起することにアクセルはあるが、ブレーキは一切ない。この需要についても、社会問題としていかなければならない」と話していた。
調査報告書に掲載された事例を紹介した記事はこちら。
「自殺に追い込まれた」「過去から逃れるために整形」AV出演強要の調査報告書公表(https://www.bengo4.com/internet/n_4367/)
(弁護士ドットコムニュース)