2015年12月8日から通販サイト「アマゾン」でスタートした「お坊さん便」。全日本仏教会が中止要請をするなど、賛否両論が渦巻いているが、実際に利用した人の感想はどうなのだろうか。
●お坊さん便、利用者の声は?
実は「お坊さん便」は、葬式・葬儀に関する総合情報サイト「葬儀レビ」などを運営する株式会社みんれびが2013年から展開していた。今回、みんれびが同サービスをアマゾンに出品したことで、議論を呼んでいるわけだ。みんれびに寄せられた利用者の声を見ると、いずれも素朴でシンプルなものだ。
「とても親切なお坊さんで対応も良く、満足のいくかたちで供養ができて、本当に良かったです」
「若いお坊さんはとてもしっかりされていて、説法も心に染み入るものでした」
「きちんと読経していただき、すべてスムーズに執り行えました。満足しています。これからの時代にマッチした法要」
「リーズナブルなのに、著名なお坊さんに来てもらい、感激しています」
仏教界の問題を指摘することも批判的な意見もなく、ごく穏やかに故人を見送る様子がうかがえる。自分たちの事情や希望を配慮してもらったことについて、喜びの声が並んでいるぐらいだ。
「普段は海外在住なので、対応してもらって良かった」
「菩提寺がある方は利用するのは難しいと思いますが、民間の霊園にお墓がある方で、お坊さんとお付き合いがない方にとってみれば、とても良いサービス」
「檀家にならないで納骨式をやりたいという希望がかなえられました」
●歓迎派が期待する、仏教界の問題改善
みんれびに寄せられているのは喜びの声ばかりだが、そもそも自社のサービスのため、良い評価や口コミばかりが並ぶのは当然といえる。では、インターネット上のコメントはどうだろうか。まずは肯定的な意見だ。
「金儲けだけの悪質なお坊さんを駆逐するためにも、とても良いサービスだと感じています。これが、仏教界の立ち直りを促すきっかけになるといいですね」
「さまざまなサービスがデジタル化している中で、この分野だけはデジタル化しちゃいけないというほうがおかしい。時代に沿っていて良い」
「地方の小さなお寺だと檀家も少なく、経営が大変厳しいお寺も多い。実は、お寺側にとっても悪いばかりの話ではないし、救世主になるのでは?」
「檀家に面識もなく、どこの寺とも関わりがない人が多い時代だからこそ、こういったサービスは非常に有効。騒いでいる多くは高齢者の方でしょう。若者には好意的に見る方が多い」
「ひどい葬儀をよく見かけます。自分だったら願い下げ。本当の葬式を考える良い機会です。お坊さん便、使ってみたいです」
「フェラーリオーナーや年収が億を超える僧侶、甘い汁を吸っているお坊さんがいる現状。お坊さん便に登録しているのは、会社員から出家した人や地盤が弱い僧侶の方がほとんどだと思います。立場の弱い僧侶を支える意味でも、このサービスを支持します」
ネット上では肯定的な意見が多く、不明瞭な戒名料や保守的な仏教界への反発か、新しい動きが歓迎されている。
●慎重派が危惧するリスクとは
一方、慎重派の声を見てみよう。
「うるさい親戚が口を挟んでくるので、お坊さん便を使うつもりの人は、遺言状に書いておきましょう」
「お坊さん便を注文して安く戒名をつけてもらっても、先祖代々のお墓を守るお寺に『よそでつけた戒名は、うちの門徒ではない』と一切の法要を断られる可能性大だから要注意」
「話題性もあるし、『何これ安い』で飛びつく人もいそう。リスクには注意が必要!」
「『葬儀当日の法事法要ではご利用いただけません』という点は要注意」
一概に否定はしないものの、新しいサービスにつきもののトラブルやリスクを警戒する人も多いようだ。
●過激な意見も多い否定派の声
また、否定派の反発ぶりは、かなりヒートアップしている。
「ふざけたことをするな! 僧侶は蕎麦屋の出前ではない! これはやり過ぎ! いったい僧侶を、法要をなんだと思ってるんだ?」
「日本人の宗教観は落ちるところまで落ちた。こんなものが出てくるとは、世界中から笑いものにされるだろう」
「宗教を商売にすることに強烈な違和感があります」
「『供養になる』と誘い、人の心を惑わす霊感商法と同様だ。法要の意味がわかってない『法事ごっこ』でしかない!」
「戒名は信頼できるお坊さんからもらうからありがたいのであって、見ず知らずの坊さんに数万円を払うなぞ、ぼったくりバーと変わらない!」
●本当の評価が知りたい“もやもや派”も
最後に、以下のような少数派もいたことを紹介したい。
「実際に使ってみた人のコメントが読みたいです。仏教がどうのこうのなんて、どうでもいいです」
「自分たちが依頼する時に、本当にいいお坊さんが来てくれるか、そういう情報がほしい。だから、利用した人のコメントを見て判断したい。サービス自体に反対するのであれば、みんれびに直接言えばいい。肯定派も否定派も、文句ばかり言ってる人たちは混乱させているだけの“荒らし”にすぎないことを自覚すべき!」
すでに、ネット上の「お坊さん便」に関する議論は過熱しており、利用者のコメントがかき消されるほどカオスな状態である。ただ、「お坊さん便」が、不明瞭なお布施など、これまでの仏教界の問題に一石を投じたサービスであることは確実だ。今後は、真の評価がネット上にあふれることを期待したい。
(文=編集部)