松重豊「100年経っても、きっと涙する人がいると思う」 | ニコニコニュース

『仏教は心の科学』(アルボムッレ・スマナサーラ/宝島社文庫)
ダ・ヴィンチニュース

毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある一冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。今回登場してくれたのは、昨年、映画『百日紅~Miss HOKUSAI』での声優デビューに続き、3月12日公開のディズニー/ピクサー最新作『アーロと少年』の日本語吹き替え版で、タフで優しい肉食恐竜を演じた松重豊さん。心の底へとダイレクトに響いてくるその声に込めたものとは?
「ゾンビ役になることはできるけど、恐竜になるのはなかなか難しいですからね(笑)

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松重さんが演じたのは牛の群れを追って移動する、恐竜版カウボーイのブッチ。初の“恐竜役”、そして日本語版への吹き替えは、楽しい発見の連続だったよう。

「映像は英語のリップシンクで口の動きが作られていますので、日本語だとやっぱりどこかで折り合いをつけなければいけないんですね。でも演じているうちに、動きがだんだん合ってくるんです。そうするとブッチがあたかも、もともと日本語を喋っている恐竜のように見えてきて。その瞬間はもう鳥肌が立ちましたね、“あー、なんか飛び立ってくれたな!”と」

 恐竜のアーロと人間のスポット、ひとりぼっち同士だった子どもたちが冒険のなかで出会う、家長・ブッチ率いるTレックス一家は、2人が成長してゆく過程のなかの大切な存在だ。

「応援メッセージになるひとつの大事なエピソードとして、スケール感を出さなくてはと思いました。威圧的であったり、“こっちまで上がってこいよ!”という背中を押すようなところもあったり、そうした子どもたちとのやりとりは、恐竜の大きさを自分のなかに借りながら演じていました」

 視覚効果数はピクサー映画最多。スクリーンには実写と見紛うほどの大自然が広がる。ストーリーもまた心の視覚効果があるように観る人それぞれのなかで膨らんでいく。

「“あの家族はその後、どうなったか”などというエピローグがこの作品にはないんです。そこがまた好きで。お客さんが想像し、育てていくという映画なんですね。今回、僕が紹介した一冊とも重なるんですけど、どこか仏教的だなと。“さあ、あとはあなたが考えてください”という心のキャッチボールができるところがいい

 完成品を観て、改めていろんな想いが巡ってきた。涙腺も大いに刺激されたという。

「僕らの深いところにある愛とか悲しみとか、そういうものが物語の根底に流れている気がしましたね。それがディズニー映画の持つ普遍的な面白さなのだと思う。この作品は100年後、たとえ時代が変わってしまっても涙する人はきっといるでしょうね」

(取材・文=河村道子)

『仏教は心の科学』

アルボムッレ・スマナサーラ 宝島社文庫 重版未定

お釈迦さまは「心」について考えた方─身体と心の動き、そのシステムくらい理解しましょうという、元来の仏教が伝えてきた、生きるための智慧を説いた一冊。歩くなど普通のことに集中する、後悔することにメリットはない等々、具体的かつ科学的根拠のある知恵は、現代人の心を軽く、前向きにしてくれる。

※松重豊さんの本にまつわる詳しいエピソードは


ダ・ヴィンチ4月号の巻頭記事『あの人と本の話』を要チェック!