元衆議院議員の杉村太蔵が、慶応義塾大学大学院メディアデザイン研究科後期博士課程に合格したことが話題となっている。コメンテーターとして出演する『サンデージャポン』(TBS系)で生報告された。
杉村太蔵は、2005年9月に行われた衆議院議員選挙に26歳で初当選。この選挙では“小泉チルドレン”と呼ばれる新人議員が多く誕生し、彼もその一人だ。「給料が高いからBMWが買える」「早く料亭へ行きたい」といった発言が物議を醸した。09年の選挙には出馬できず浪人生活に。10年に行われた参議院議員選挙では自民党を離党し、たちあがれ日本から出馬するも落選。以降は、タレント・政治評論家として多くのテレビ出演を果たしてきた。
大学院合格は喜ばしいが、気になるのは杉村の経歴である。杉村の最終学歴は筑波大学体育専門学群中退。大学中退なのだ。大学院といえば一般的には大学の学部を卒業して進学する場所だ。さらに博士前期課程(修士課程)も飛ばして博士後期課程に合格している。これはなぜだろうか。
実は大学院に入学するためには必ずしも大学を卒業している必要はない。杉村が合格した、大学院においても出願資格には「第4号.修士課程を修了した者と同等以上の学力があると大学院メディアデザイン研究科が認めた者で24歳に達している者」とある。24歳は一般的には大学学部を卒業し、2年間の修士課程をストレートで終えた年齢である。学年を超えた飛び級は認められてないものの、大学院の審査をパスすれば、いきなり大学院に入学することも不可能ではないのだ。
同様の例はほかにも見られる。元プロ野球選手の桑田真澄は、2009年に早稲田大学大学院スポーツ科学研究科修士課程1年制コースに合格し、翌年に修士論文を書き修了している。桑田の場合、プロ野球選手および野球評論家としての経歴が評価され、大学の学部を飛び越えての大学院入学となった。
杉村も政治家および、政治評論家とてのタレント活動が評価されたのだろう。2年前からチャレンジしていたというから、何度か落ちてもいるのかもしれない。試験科目は、履歴書や職務経歴書や研究業績一覧、成果物などによる事前審査(書類審査)を経て、口頭試問(面接)を行う。
現在、大学院は多くの社会人に門戸を開いている。ただし、誰でも良いというわけではない。自分の社会人経験をどう研究に結びつけるかという視点が求められる。特に杉村が入学する大学院の後期博士課程は、博士論文の審査に合格し、博士号が与えられて初めて修了(卒業)扱いとなる。博士論文は、新規性のある研究でなければならず、国立国会図書館にも所蔵され広く公開される。研究者としての高い資質が求められる場所なのだ。厳しい道となりそうだが、研究者・杉村太蔵の未来に期待したい。