韓国・ソウルで2月20~21日に開かれるはずだった東日本大震災復興のPRイベントが直前になって開催中止に追い込まれた。このイベントは外務省が主催。青森、宮城、福島など4県が参加して各地の特産品を紹介する予定だった。
しかし開催当日、開催地であるソウル市城東区が「会場の使用を許可しない」と外務省に通告し、突然のイベント中止となった。原因は韓国のいくつもの市民団体が「原発事故で放射能に汚染された食物を食べさせるのか」という抗議活動を行なったことだ。
震災直後から韓国では放射能被害に関するデマがばらまかれた。以下はほんの一例だ。
・日本の領土は国土の半分が高濃度放射能に汚染されている
・福島原発事故による放射能放出量はチェルノブイリ原発事故の11倍だ
・日本でも食べられない放射能汚染食品が韓国に輸出されている
多くのデマのなかで韓国人が最もヒステリックに心配するのが「食の安全」だ。韓国の保健社会研究院が2011年1月から2015年6月までにSNS上で集計した「食品安全関連、否定的および不安キーワード20」を選定して分析した結果、「日本の放射能汚染食品の安全性の問題」が消費者敏感度で1位を占めた。日本の食品の安全性を不安がる声は大震災から5年経っても一向に収まっていない。
その顕著な例が韓国政府による日本産水産物の輸入規制措置だ。韓国は2011年3月の原発事故を受けて、被災地など8県の一部水産物の輸入を禁止した。さらに2013年9月には福島第一原発の汚染水漏れを理由にして、8県のすべての水産物の全面的輸入禁止に踏み切った。水産物を輸出していない内陸県である栃木県、群馬県まで含めるトンデモ措置だった。水産庁漁政部加工流通課の担当者が苦い顔をする。
「韓国は8県以外の水産物についても、韓国側の検査で放射性物質が検出された場合、日本の輸出業者にストロンチウムおよびプルトニウムの検査を求めています。しかも、一般的な放射能検査は10ベクレルレベルですが、韓国が行なうのは1ベクレルレベルという微少なレベルの精密検査。これでは輸出業者のリスクが非常に高く、全水産品の輸入制限に等しい」
日本政府は「韓国の措置には科学的な根拠がなく、不当な差別だ」と措置撤廃を申し入れたが、全く聞き入れられていない。
「現在も厳しい輸入制限は続いている。実態に合わない規制がずっと行なわれている異常事態だ」(前出・水産庁漁政部加工流通課)
痺れを切らした日本政府は昨年8月、世界貿易機関(WTO)に韓国を提訴している。止まらない韓国による被災地差別。『「反日モンスター」はこうして作られた』(講談社)の著者で韓国人作家の崔碩栄氏が矛盾だらけの祖国に苦言を呈する。
「韓国ではいまだに“日本の放射能は危ない”という認識が強い。しかし、本当に不安で危険ならば、なぜ韓国人の日本訪問客はあれだけ急増したのか。韓国はいまだに日本産水産物の輸入を制限するが、来日した韓国人は喜んで寿司や刺身を食べている。明らかに矛盾しています」
事実、2015年に日本を訪れた韓国人旅行者数は前年比45%増の400万人で過去最高を記録した。そこまで日本が好きならば、被災地の復興にも温かい眼差しを向けてほしい。
※週刊ポスト2016年3月11日号