春先の悩みのひとつである「花粉症」。吸い込まないようにとマスクをつけているひとも見かけますが、「花粉」が治療に役立つのはご存じでしょうか? 目や鼻から入った花粉を「侵入者」として認識、抗体が過敏に働き過ぎるのがくしゃみや鼻水の原因ですが、わざと花粉を体内に入れる「免疫療法」によって症状が和らぐひとも多いことが判明。現在は保険が適用されるようになり、
目安は月2~3000円とリーズナブル。毎年のことだから、とあきらめず、お医者さんに相談してみるのがよさそうです。
■自虐的な花粉症
花粉症は日本だけの病気ではなく、古くは1800年代にイギリスで発見されたといわれています。ただし原因となる植物とおもに発生する地域は、
・イネ科 … ヨーロッパ
・ブタクサ … アメリカ
・スギ … 日本
とまちまち。スギ「だけ」に反応するひとなら、海外に行けば症状が起きない可能性もあります。
花粉症はどうして起きるのでしょうか? 目や鼻から花粉が入ると、からだはそれを受け入れるか否かを判断します。受け入れない! と決まると、残念ながら花粉症が始まり、
・花粉を排除するために「IgE」抗体が作られる
・IgE抗体が、鼻や目のマスト細胞にくっつく
と防御体制をとります。ところがこれがアダとなり、花粉がIgE抗体に触れると、マスト細胞はヒスタミンやロイコトリエンと呼ばれる物質を放出し、排除しようとします。このヒスタミンやロイコトリエンこそがアレルギー症状の原因で、くしゃみや涙、鼻水や鼻づまりを引き起こしてしまうのです。やっかいなことに、これを繰り返していると好酸球(こうさんきゅう)という物質が増えて細胞を傷つけ、さらに敏感になってしまいます。花粉を追い出すためのシステムが自らを傷つけたり、つらい症状を引き起こすなど、自分を苦しめる方向に働くのが花粉症なのです。
■花粉症を治す「花粉」?
花粉症はクスリで治せるのでしょうか? 現在はヒスタミンの作用を抑える「抗ヒスタミン薬」が中心で、言い換えれば「なだめて」いるに過ぎません。ところが最近注目されているのがなんと「花粉」で、原因物質をわざと体内に入れると症状が和らぐことがわかったのです。
アレルギーの原因を使うことから「アレルゲン免疫療法」と呼ばれ、花粉の成分を注射する、口に入れることによって、
・アレルギー反応を抑えるTh1細胞
・IgE抗体と花粉の結合を妨げる、IgG抗体
などが増加し、アレルギー反応が起きにくくなるのです。
以前は保険の適用外だったため非常に高額でしたが、現在は保険証が使えるので、
・初回 … 5,000円
・以降 … 2,000~3,000円
が目安と、リーズナブルな料金で治療できるようになりました。もっとも、症状や体質によって料金の差もあるでしょうし、それ以前に「誰でも」効果があるとは限りませんので、まずはお医者さんに相談するのが良さそうです。
品種改良による「花粉のないスギ」も研究されていますが、実用化されるかはっきりしていませんし、Yesでも普及するのはそうとう先の話。毎年花粉症に悩まされているひとに、免疫療法が朗報になることを願います。
■まとめ
・花粉症は、自分で作り出したIgE抗体がアバれる君になっている状態
・花粉と結合したIgE細胞が、ヒスタミンなどを分泌させる原因になっている
・体内に花粉を取り込む「アレルゲン免疫療法」も存在する
・保険が適用されるようになり、リーズナブルな料金で治療を受けられる
(関口 寿/ガリレオワークス)