お笑いコンビ・オリエンタルラジオとダンサー4人によるユニット『RADIO FISH』の楽曲、『PERFECT HUMAN』が話題だ。ダンスミュージックに合わせて、藤森慎吾(32)が相方の中田敦彦(33)を神のように称えるラップを披露し、中田が「I’m a perfect human」と決め台詞を吐く。リズムネタとしては曲が懲りすぎているうえ、お笑いに必須のオチもない。そのため、「これはお笑いなのか、音楽なのか」と、お笑いファンの間で論争が巻き起こっている。
『PERFECT HUMAN』は音楽業界をも席巻し、iTunes総合チャートで1位を獲得。『RADIO FISH』は今週金曜日(3月11日)の『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)にも出演する。
ジャンル不明のこのネタを、どのように解釈すればよいのか。お笑い評論家のラリー遠田さんはこう語る。
「演芸の歴史をさかのぼっていくと、楽器や歌を取り入れた漫才や漫談は珍しくありません。『PERFECT HUMAN』もその伝統のライン上にあるものなので、お笑いなのか音楽なのかという二分法で考える必要はないと思います。もちろん、見ている人に『どっちなの?』と思わせるところも含めてのネタではありますが。
このネタの特徴は、芸人の要素が全く見えてこないくらいの歌とダンスのクオリティー。これを本格的なネタ番組の『ENGEIグランドスラム』(フジテレビ系)で披露したことに大きな意味があります。この番組には、実力派の芸人たちが取っておきのネタを引っさげて、満を持して登場します。みんなが真剣にお笑いをやっている中でオリラジだけが変わったことをやっているので、それがシュールなギャグになる。MCのナインティナイン・岡村隆史(45)さんから、『オリエンタルラジオ何してんねん』とツッコミを入れられたところも込みで、ネタだったというわけです」(ラリー遠田さん、以下「」内同)
しかし、そこを理解できずに呆気にとられた視聴者も多い。ギャグとしてはあまりにもわかりにくいのではないか。
「演者側の多くはお笑いのルールのようなものを意識しているかもしれませんが、テレビを観ている人にとってそれは関係ない。盛り上がればオーケー。新しいものをすぐに受け入れる若い人たちは特にこのネタを違和感なく楽しめたようですし、違和感があった人も『なんだこりゃ』と気にせずにはいられなかった。ネット上では賛否両論ありますが、『否』の人も無視できないインパクトがあったということ。炎上しても話題になれば、芸人としてはオイシイのです」
何から何まで、オリラジの狙い通りということか。ダウンタウンの松本人志も『ワイドナショー』(フジテレビ系)で「タフやな~、今の後輩たちは」と感心するなど、前例のないネタに業界人の反響も大きい。ここまで思い切ったことができるのは、オリラジの「テレビ芸人としての凄み」があるからだとラリー遠田さんは語る。
「普通の芸人さんはお笑いのルールや慣習を学んでからテレビに出てきますが、オリエンタルラジオはデビューしてすぐにスターになったので、そういうことに意識が縛られずに自由な発想でテレビ向けのネタを考えることができます。『テレビで観てこれは面白いかどうか』という価値基準から生まれたのが『PERFECT HUMAN』だったのだと思います」
オリエンタルラジオは2005年にデビュー。リズムネタ『武勇伝』でブレイクし、一時はレギュラー番組を10本を抱える超売れっ子芸人となった。その後、低迷期を経て、藤森がチャラ男キャラで再ブレイク。今回の『PERFECT HUMAN』はYouTubeの公式ライブ動画の再生回数が1400万回を突破するなど、3度目のブレイクといえる勢いだ。
「コンビが迷走する中で、自分たちの強みは歌とダンス、リズム感にあるということを再確認したのだと思います。中田さんのカリスマ的カッコつけキャラと、藤森さんのチャラいノリを生かして全力ではしゃげる才能がよく活かされています。中田さんは戦略家で、失敗してもまた次を考えて実行する力に長けている。今回もまた手応えを感じたはずで、今後も時代を超えてブレイクを起こし続ける可能性はあります」
ネタではなく、本当の武勇伝を作る芸人になろうとしているのかもしれない。