NHK朝の連続テレビ小説『あさが来た』が放送終了まであと1か月を切るなかで、好調をキープしている。ヒットの要因は数々言われているが、これまでの朝ドラではあまりなかった“イケメンリレー”も人気を後押しした。コラムニストのペリー荻野さんが、放送を振り返りながら、ヒットのカゲにあった新手法について解説する。
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いよいよ物語も大詰めとなってきた『あさが来た』。先日、最終収録が終わり、主演の波瑠は涙涙だったそうだが、通常、ラスト収録は立ち会った報道陣に公開されるのが、今回は未公開。どうやら、最後の最後まで「ぴっくりぽん」が用意されている様子。話題作りのダメ押しもしっかりしている。
『あさが来た』については、スタート当初からヒット朝ドラマの鉄則をしっかり研究したドラマだということがよくわかっていた。その鉄則とは「最高視聴率62.9%を記録した『おしん』のような女の一代記ものであること」「『あまちゃん』のじぇじぇじぇのように、びっくりぽんという合言葉があること」「『カーネーション』の綾野剛のように、ヒロインの前に結婚相手とは違う第二の男五代友厚(ディーン・フジオカ)がいること」「苦労して作ったウイスキーが高く評価された晩年の姿を第一話冒頭にもってきた『マッサン』のごとく第一話のはじめのシーンで女子大で堂々と語る晩年のあさの姿を出して、ドラマの着地点を見せていたこと」などなど。
そして重要なのが、イケメンのリレーが出来上がっていたことである。当初、あさの前に現れた許嫁の新次郎。玉木宏はおっとりしたぼんぼんで、頼りないが笑いのわかるいい男。ふたりの結婚エピソードとともに、彼らを応援する祖父が林与一、新次郎の父が近藤正臣と、昭和を代表するイケメンスターが、私を含めて昭和世代の胸を騒がせた。
続いて登場した五代友厚。ディーン・フジオカ人気が沸騰。また、雁助(山内圭哉)とうめ(友近)、亀助(三宅弘城)とふゆ(清原果耶)の関係にも注目させる。
五代亡きあとは、女子大設立を目指すぼさぼさ頭の熱血教育学者成澤役の瀬戸康史が登場。瀬戸といえば、昨年の大河ドラマ『花燃ゆ』では、悲劇的な最期をとげる吉田稔麿役で見せ場たっぷり。Eテレでは『グレーテルのかまど』でスイーツを作って女子からも人気を博す。イケメンリレーのバトンをしっかり受け取って走っている。
そして、イケメンリレー最終走者ともいえるのが、あさの娘千代の前に現れた東柳啓介(工藤阿須加)である。あさが暴漢に刺され入院した病院で出会った女学生の千代と帝大生の啓介。詰襟の啓介は倒れ込んだ千代に手を貸し、彼女はドキドキ。その後、病院の水場で彼が不器用にリンゴをむいていると、今度は千代が手助けする。彼が「べっぴん」と言うと顔を赤らめる千代だが、「リンゴのことだよ」…って、少女マンガですな、これは。
実はこの啓介の存在も、ヒット朝ドラマの鉄則に則っている。朝ドラマでは過去にも学生服姿で登場してブレイクしたイケメンが多くのいるのである。古くは1967年の朝ドラマ『旅路』の横内正、1984年『心はいつもラムネ色』の新藤栄作、2000年『オードリー』の佐々木蔵之介…。『あさが来た』はイケメンリレーという新しい朝ドラマの鉄則と、過去の成功例の踏襲というふたつの路線でがっちりファンをつかんだ。工藤阿須加が最後までどうなっていくか。最終ランナーの走りに注目だ。