スリリングなサバイバルゲームが日常の環境の中でも楽しめるようになる――。しかもスマホを使って手軽に“戦争”ができることになりそうだ。
■『Father.IO』はまさに『Ingress』のFPS版
カウボーイという西部開拓時代のヒーローを有するアメリカでは、子どもたちも遊びの中で自然と銃撃戦ごっこに興じていたりするようだが、昨今ではLaser Tag（レーザータグ）という、レーザービームを使ったサバイバルゲームも人気だ。
本格的なサバイバルゲームに比べればハードルが低いLaser Tagだが、やはり遊ぶ前にはそれなりに準備が必要で、銃もプレイヤーも揃っている専用の施設に行くなり、前もってメンバーを集めるなりしなくてはならないのは当然のこと。
しかし今回登場した『Father.IO』は、近所の日常の環境を“戦場”に変え、敵も味方もその場に現れてくるという、画期的なLaser Tagなのである。それもそのはず、ゲームで使う銃もマップもすべてスマホで事足りるシステムだからだ。いわばGoogleの位置情報ゲーム『Ingress』のFPS（ファーストパーソンシューティング）版とでも言えるゲームが、この『Father.IO』なのだ。
『Ingress』と同じくアプリそのものは無料で、OpenStreetMapから提供されたマップをベースにして、現在地の50平方メートル以上の範囲を“戦場”に変えることができる。地図上で特定されている建物が、そのままゲームの世界に取り込まれるというわけだ。逆に『Ingress』と違う点は、なんといっても生身の人間を相手にして仮想の銃撃戦を繰り広げることにある。その面白さは動画でもよく伝わってくる。
敵にも味方にもその場で出会うことになり、現場のプレイヤーたちのほかにも、部屋で椅子に腰掛けてPCで作戦の指揮を執っている司令官も戦闘に参加し、2つの勢力が緊迫した闘いを繰り広げている。PCで参加しているプレイヤーがドローンを操縦して攻撃を行なっているシーンもあり興味深い。確かにこのシステムであれば、事前にプレイヤーを集めなくともすぐにゲーム始められることになる。『Ingress』のようにプレイヤー人口が増えるとなかなかスゴイことになりそうだ。
■いつどこで“銃撃戦”が勃発するかわからないスリル
この『Father.IO』で遊ぶに際して、プレイヤーはHumans（人間族）かEvolved（進化種族）のどちらかに属さなければならない。この点も青と緑の2つの陣営を選ぶ、『Ingress』に似ているといえるだろう。開発者によれば、Humans対Evolvedの闘いは3カ月でいったんリセットされるということだ。この期間中の戦いで勝利を重ねるほどにプレイヤーのランクが上がり、より強力な武器が扱えるようになるということだ。
そしてハード面の特徴は、スマホにセットして使うThe Inceptor（ザ・インセプター）と呼ばれる、独自に開発された30gほどの機器である。The Inceptorは6つのセンサーを搭載し、発射されたレーザーの弾道を検知して銃撃戦の“審判”を行なうのだ。もちろんiPhoneにもAndroidにも装着できる。このThe Inceptor自体もマイクロUSBで充電可能なバッテリーを内臓しているので、連続プレイ時間は思いのほか長そうだ。
なかなか面白そうな『Father.IO』は、現在クラウドファンディングのIndiegogoで出資を募っている。まだプロジェクト終了までには日にちが残っているが、すでに設定ゴールの5万ドル（約560万円）の3倍近い出資を集め大成功を収めている。ちなみにプロジェクトを立ち上げて開始24時間で目標額を超えたということだ。とりあえず20ドル（約2200円）の出資でThe Inceptorが1つ入手できる。発送は今年夏から順次行なわれるという。
公式サイトを見る限り、残念ながら日本への発送は未対応で、日本語化されるかどうかも不明だが、大ヒットとなればそれなりのローカライズ展開が行なわれるかもしれない。それにしても、街中でこのFather.IO』のアプリを立ち上げておくといつ何時“銃撃戦”が勃発するかわからないというのもかなりのスリルではないだろうか。『Father.IO』のリリース後に“戦場”と化した街中がいったいどんな状況を迎えているのか興味深い。
（文／仲田しんじ）
【参考】
・Gizmag
http://www.gizmag.com/fatherio-laser-tag-augmented-reality-mmo-shooter/42031/
・「Indiegogo」の『Father.IO』ページ
https://www.indiegogo.com/projects/father-io-first-real-life-massive-multiplayer-fps--2#/