「急に用事ができてしまった……」「昨夜、遅くまで遊びすぎてしまった……」 そんなとき、ついついアルバイトをサボってしまった経験がある方もいるのではないでしょうか。バイト先に「休む」という連絡をしているのならまだしも無断欠勤をしてしまった場合……、これって何か法的な責任は負うのでしょうか。
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■アルバイトの無断欠勤は罪になる?
アルバイトを無断欠勤しても法律上は罪にはなりません。
もちろん、サボった本人には後ろめたい気持ちがつきまとうでしょうし、バイト先の人たちには怒りや責めたくなる気持ちもあるでしょう。「罪」として問いたくなる気持ちも分かりますが、犯罪とは「これを犯した人を国が罰する(懲役や罰金など)」ということです。あらかじめ刑法などの法律に規定されているもののことを指すのですが、これには「罰を与えてでも禁止しなければならないようなもの」しかありません。
日本の法律には、「労働者の無断欠勤を犯罪とする」という規定はないので、罪になることはないでしょう。とはいえ「解雇の理由」にはなりますので、無断欠勤の理由・頻度・期間によってはクビになってしまうこともあります。
■職場の損害は賠償しなければならない?
「君が無断欠勤したせいで、代わりの人員を確保するために費用がかかった! 損害賠償を払え!」
……もしバイト先からこう言われてしまったら、やっぱり払わなければならないんでしょうか?
アルバイトを始める際、労働者と会社は雇用契約を結びます。この雇用契約に基づいて、労働者は決まった時間働く義務を負い、会社は給料を払う義務を負います。無断欠勤は、「雇用契約を破って働かなかった」ということになるので、そのせいで会社に損害が発生したのなら、賠償はしなければなりません。
ただし、損害の範囲はごく限られたものになると思います。たとえば、急遽代わりに仕事に入ってもらった人に対して給料を払ったとしても、もともと無断欠勤をした人に払うはずだった給料をそちらに充てただけですから「損害」とはいえないでしょう。
また、「君が無断欠勤したせいで売上が落ちた!」と言われたとしても、それが本当にその人が無断欠勤したせいなのか(因果関係)、具体的にいくら無断欠勤のせいで売り上げが減少したのか(損害の額)を会社側は証明しなければなりません。それを証明することは非常に困難なため、払わなければいけない状況になる可能性は低いと考えられます。
■無断欠勤のまま辞めたら給料は出ない?
いくら迷惑をかけられたとはいえ、その人が働いた分のお給料は、労働に対する正当な対価なのできちんと払わなければなりません。
そもそも、労働基準法では労働者の権利を守るため、「給料の全額払いの原則」を定めています。たとえば「君が割ったお皿の代金は給料から引いておくからな!」などと言って会社が勝手に損害分を給料から天引きすることは許されていないのです。
給料については、まず全額を支払った上で、別途、損害についての話をする必要があります。
たとえ法的な責任には問われないとはいえ、無断欠勤は職場にもほかの従業員にも迷惑をかけることになりますし、周りの信用を失うことにもなります。アルバイトも会社と雇用契約を結んで働くわけですから、安易なサボりや無断欠勤は止めておくべきなのではないでしょうか。
(島田さくら 弁護士/アディーレ法律事務所)