北米時間2016年3月14日,プロ用のオーディオプロセッサ(≒サウンドエフェクト)メーカーであるWaves Audio(以下,Waves)は,Game Developers Conference 2016(以下,GDC 2016)の開幕に合わせ,ヘッドフォンやヘッドセットの利用時に音が横からではなく前から聞こえる技術「Nx」を,ゲーム用途に展開すると発表した。「Wwise」や「FMOD」というゲーム開発用のオーディオミドルウェア,そしてHTC製の仮想現実(VR)対応ヘッドマウントディスプレイ「Vive」に対応するという。
■Nxとは何か
任天堂の次世代ゲーム機と関係のないNxは,すでにプロ用市場で展開済みのオーディオプロセッサだ。
従来型のヘッドフォン/ヘッドセットが抱える問題は,「本来,ユーザーの斜め前に置いてあるスピーカーからステレオ感を伴って聞こえるべき音」を,ユーザーの右と左に分離してしまうことにあった。この場合,人間の耳というか脳は,分離されて耳に入ってくる音を「左右それぞれ真横から入ってくる音」として認識してしまい,結果として,正しいステレオ感が得られなくなる。
それに対してNxでは,音が人間の鼓膜に到達した状態をシミュレートするバイノーラル技術を応用し,フロント2chスピーカーを仮想空間に“設置”する。これにより,ユーザーが正面を向いた状態では音が前から聞こえ,それこそ左を向けば右から聞こえるようになるというわけだ。
また,Nxは,2chステレオだけでなく,5.1chおよび7.1chサラウンドサウンドにも対応できる。VRコンテンツをはじめとするサラウンドサウンド採用コンテンツを利用するときにも,フロントを含む完全な定位が得られるとのことだ。
従来のバーチャルサラウンドだと,フロント方向のサラウンド効果が弱いことが多く,これがゲームプレイにおける違和感につながることが多い。だからこそ,4Gamerでヘッドセットのレビューを担当している榎本 涼氏は,4Gamerでリファレンスのバーチャルサラウンドサウンド機能として採用する「Razer Surround Pro」で,フロントのサテライトをセンターに寄せて,前方向の音を聞き取りやすいようにしているのだが(一例として関連記事),これがNxで解決し,サラウンド情報を聞き取りやすくするとすれば,かなり画期的だろう。
現在のところ,ゲーム対応版Nxのリリース時期,および対応製品のリリースは未定。Wavesは一般消費者向けに製品を売るタイプのメーカーではないため,おそらくは将来的に,PCメーカー,あるいは周辺機器メーカーの新製品としてNxを組み込んだゲームPCやゲーマー向けヘッドフォン/ヘッドセットが登場することになると思われる。GDC 2016中に追加情報がもたらされるのかどうか,今後の動向を見守りたい。
リンク:Waves公式Webサイト
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