人は誰しも何かしらのこだわりを持っているのではないか。朝食はパンがいいとか、出かける前に見るニュースのチャンネルが決まっている、などである。このようなこだわりは日常生活の別の部分に影響を与えることは少ないが、深夜番組のリアルタイム視聴にこだわる、などのような場合は、次の日の学校や仕事に影響が出そうである。さらに電子書籍がある一方で、紙の本にこだわる人もいる。ただこだわるだけではなく、時として「電子書籍VS紙の書籍」などという不毛な議論につながることも。今回はこのような人が頑なに意志を変えたくないと思う“こだわり”について、心理学者の内藤誼人先生に聞いてみることにした。
■そこには譲れない理由がある
「職人さんなどは、自分が仕事で使う道具に関しては、ミリ単位でのこだわりがあるといいます。素人には到底理解できないレベルです。当人にしか分からない、手の馴染み具合とかが非常に重要なのです。そのような道具でないと、納得できる仕事もできないのでしょう。こだわりを持つ人にも、同じような心理が働いていると思います」(内藤先生)
無茶なこだわりのように見えても、本人にしか分からない重要な理由がそこにはあるのだ。では紙の本へのこだわりについても同様なのか、さらに伺った。
■紙の本に不便さなんて感じない
本は紙で読みたいとこだわり続ける人にはどのような理由があるのだろう?
「それは単純に、過去の経験からの『慣れ』です。電子書籍がメジャーになってきても、本は紙じゃないとイヤという人は、紙で『慣れ』ていて、不便さなど感じていないのです。むしろ、新しい媒体や道具に慣れるほうが面倒です。たとえば、ライターさんには今でも、エンピツにノートのほうがメモを取りやすい、という人がいます。パソコンやタブレットのほうが不便だと思っているので、別に利便性を捨てているわけじゃないのですよ。本人にとっては『便利』なのです」(内藤先生)
人間は慣れているものが一番使いやすいのだと内藤先生。もちろん他の理由を挙げる人もいることだろう。見たいページにすぐに到達できるから、や、複数の本を同時に並べて見ることができるから、など様々な理由については皆さん自由に議論いただくとして、内藤先生の考察では「慣れ」の問題であるということだった。続いてこれらのこだわりの根源には何があるのか、さらに考察してもらった。
■こだわりの根源にあるもの
「こだわりがある人というのは、他の人に比べ、より深化し構造化された知識があるということです。料理に詳しくない人は、スーパーに並んでいるサンマを見てもどれも一緒のサンマにしか見えませんが、料理人であればどのサンマがおいしいのかが、どうしても見えてしまいます。そのような構造化された知識や経験があるので、こだわりも出てくるのではないかと心理分析できます」(内藤先生)
こだわりを持つことは、仕事であれ、趣味であれ、「納得できる」「満足できる」という充実感が得られることにつながると内藤先生は最後に付け加えた。
内藤先生の分析は上記であったが皆さんはいかがだろうか。「教えて!goo」では、「あなたが生活や趣味、仕事などでこだわっていることは何ですか? なぜこだわるのか、その理由を教えてください。」ということでみんなの意見を募集中だ。
●専門家プロフィール:内藤 誼人
教えて!goo スタッフ(Oshiete Staff)