近頃、「英語を勉強しにセブ島に行ってきた」という報告をSNSなどで目にすることがないだろうか。ビールを片手にビーチで過ごす楽しそうな写真をアップし、なにやら英語のスキルも上がったと聞く。人によっては大きくTOEICスコアを上げたと語る人もいて、仕事で英語を使う機会があるのなら、密かに気になっているという人もいるだろう。
語学学校がたくさんある中で、なぜセブ島なのか? それは「徹底したマンツーマンレッスン」という、日本や欧州ではなかなか叶わない環境を提供しているためだ。完全な1対1のレッスンであれば、自分のレベルや、クラスメイトとの相性を心配することなく英語習得に集中できるだけではなく、1日3時間~8時間という英語漬けの環境を提供しているため、短期で集中した英語訓練をすることができる。
日本でもこのようなスタイルで大手語学スクールがまる1日のマンツーマン英語漬けプランを提供しており、筆者も参加を検討したことがあるが、1日で10万円近い金額となる。これがセブなら同じ金額で、3食宿泊付きで2週間通えてしまう。こんな風に考えると、検討の余地があるように思えてこないだろうか。そうなると気になるは学習環境だろう。
フィリピン式のマンツーマンレッスンは、もともと韓国系の企業が起ち上げてきた方法であるが、ここ数年で日系の学校が急速に増え、その運営も安定してきているという。それによって、寮や食事の面での過ごしやすさが格段に上がり、一部の南国が得意な人に限定することなく、幅広い層に勧められるようになったように思う。一方で、一部のオンライン英会話を経験した人の感想として、講師のレベルについて疑問視する声があるのも事実。従って、英語上達を願うビジネスマンからすると、セブ留学、フィリピン人講師ってぶっちゃけどうなの? というのが本気で英語上達を願うビジネスパーソンからすると、本音なのではないだろうか。
そこで本連載では、英国に住み、自身も英語に大いに困りながら、記者根性で現地の語学学校を複数経験した立場として、従来型の欧州スタイルと比較をしながら「セブ留学」を取材。客観的なライターの視点ですべて本当のところを書くつもりでいる。2012年に一度韓国系老舗CPILSで3週間のセブ留学も体験している。よくある取材のように授業を見学するだけではなく6週間実際に授業に参加し、自分の語学力向上に努める。まさに人体実験だ。
今回協力してくれたのは、オンラインとオフラインの両方を扱い700名以上の講師を擁する在フィリピン大手の「QQ English」と、社会人の需要に特化し、ビジネス英語を得意としている「MBA」。事前の情報収集を経て筆者が本当に行ってみたいと感じた2校に直接コンタクトした。私が当初抱いていた疑問とは、主にこういったものだ。
・具体的に、1日はどんな生活になるのか
・授業以外のセブでの生活はどうか、危険はないのか
・リゾート留学って実現可能なのか
・英語力は本当に伸びるのか
・中級者にはどうなか、物足りなくはないのか
・逆にまったく話せないとさすがに厳しいか
・日常会話はよくても、ビジネス英語はさすがに難しいのではないか
・海外赴任や海外留学組が、語学力キープ目的で使えるか
・30代、40代、50代、60代で混ざると浮く??
・個人ではなくて法人が、欧米への語学研修代わりに使って効果は出るか
・選んだ学校によって、得意分野に違いなどはあるのか
上記のように、比較的新しい英語の学習方法である「セブ留学」については、まだいろいろな疑問があると思う。そこで、これらの質問に答えながら、読むだけで誌上体験できるよう写真などの詳細を盛り込み、セブ留学の本当のところとお伝えしていく。滞在中に連載がスタートするので、可能であれば記事内で質問にも回答していきたい。
なお、セブで迎える3回目の週末に、この記事をリゾートエリア、マクタン島に位置するABACAリゾートというホテルのプールサイドで書いている(本記事のために少し奮発した)。
慣れない初期の疲労を乗りこえ、1日の風邪ダウンも経験しつつ、街歩きや、格安ショッピング、マッサージなどを楽しみつつ、英語学習意欲は上々。3週間前に比べて、CNNのニュースが聞きやすくなったという実感をもっている。
つまり、まだ1話目であるが、本連載のタイトルに端的に答えると、「リゾート気分を楽しみながらの語学上達は実現する」と言ってよさそうだ。ここまでの経験から、総じてセブ留学はすでにビジネスマンにとっても考えるに値する選択肢となっている。初心者に限らず、中級者にもお勧めできる。
ただし、レベルや目的に合わせた学校選び、滞在場所選びが非常に重要であり、「格安」を狙いすぎるとビジネスマンにとっては少々厳しい環境になるかもしれない。何より上達が見込める分、セブ留学は結構大変だ。体力勝負で勉強に打ち込む滞在となる。
「どう大変なのか」「どう効果的なのか?」「なにか課題で、なにに注意すべきなのか?」について、今後数回の連載でゆっくりと書いていきたい。本音を書くことについて学校長らからもすでにその了解を得た。次回から毎週更新。お楽しみに!
なお、同種の学校は実はフィリピン全土にあるが、今回は、「日本人の利用しやすさ」「日系スクールの多さ」「リゾート要素の取り入れやすさ」という観点から、主にセブ島にだけ焦点を充てていくことにする。
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高野美穂(たかの・みほ)●スタイルクリエイト代表、英国在住コミュニケーションコンサルタント。1979年、東京都生まれ。大学卒業後、ベネッセコーポレーション入社。進学情報誌の編集を務めた後、2005年にコンテンツ制作会社を設立。以来、執筆・企画制作のほか、ビジネスシーンでのイメージコンサルティングやメディアを通じたコミュニケーション分野でも活動。その延長として日本人の英語習得法に関心を持つ。2014年に渡英。ラグビーW杯英国大会においても精力的な取材活動を展開した。著書に『夢がかなう 「いろの魔法」』、『ストーリーでしっかり身につく 今どきのビジネスマナー』、『W杯イングランド大会ラグビーファンみんなの観戦記』(共著)ほか多数。
スタイルクリエイト http://style-create.jp/
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