【速報3】CG児童ポルノ裁判記者会見 堂々と不当判決を批判する被告に、今後の創作活動も聞いた | ニコニコニュース

左から山口貴士弁護士、被告の高橋証さん、壇俊光弁護士
おたぽる

 検察官の主張する34枚の画像中、児童ポルノはわずかに3枚だけ──。

 不当な判決が下されたCG児童ポルノ裁判。判決後、午後4時から司法記者クラブで行われた記者会見で、主任弁護人の山口貴士弁護士は判決の不当性を非難した。

「量刑としてはまけられているが、児童ポルノとして認定してはならないものを児童ポルノとして認定している点で、不当な判決です。裁判所は『聖少女伝説』については、どのCGも児童ポルノと該当しないと判断している。『聖少女伝説2』のほうを正当に判断しなかったことは残念に思っている」

 さらに、山口弁護士は「懲役1年、罰金30万円」という量刑が、重すぎる点も指摘する。

「求刑2年、罰金100万円は、CG画像34枚のもの。実際には1割以下しか認定しなかったことを考えると、被告人に『これ以上の創作活動を行うな』と圧力をかけようとするものとも思われます。その点についても不当だと考えています」

 弁護団の壇俊光弁護士は、判決の恣意性を指摘。「全面的に無罪となることを避けるために、一般人ならどう思うかという社会的法益を取り入れたと考えている。この判決では、何が処罰されるべきか否かを裁判所は何も応えておらず、今後の創作活動を萎縮させる効果は高い」と述べた。

 なぜ有罪判決が下されてしまったのか。実のところ弁護団の頭にも疑問符が浮かんでいる。

 というのも、判決では裁判官が早口で要旨を読んだだけ。タナー法による判定や検察官が証拠として示した少女ヌード写真との同一性といった観点からふるいにかけていくと、最終的に3枚が残り、そこには輪郭をなぞっているような意図が見られる云々……。

 被告と弁護団の「CGではなく創作的意図を持った絵画」との主張がなぜ受け入れられなかったかなど、疑問はつきない。それらの検証は、判決文を熟読してからということになる。

 さて、3年あまりにわたる裁判を戦ってきた被告の高橋証さんは「芸術活動の価値が理解されなかったようで残念です」とコメント。弁護団が用意した「不当判決」と記された「びろーん」を手に、じっと前を見つめて写真撮影に応じた。

「当初からCGだと主張したことはありません。私は絵画を制作してきた」

 改めてそう語った高橋さんは、裁判官が判決要旨を読み上げている最中も、微動だにせず聞き続けた。そこには、単に罪から逃れたい意図で「芸術である」と述べているのではない、確固たる意志を感じる。

 そんな高橋さんは、今後も同様の創作活動を続けていくつもりかという問いに、否定の言葉を述べた。

「制作者の意図にかかわらず、どういう受け取り方をされてしまうかはわかりません。見る人によってとらえ方はさまざまですし、視覚に訴える作品のインパクトは強いものです。そういうところで誤解を与えてしまう可能性があるこのようなものの創作は、しないと思います」

 すわ萎縮か。だが、高橋さんは「萎縮しているのではない」という。

「強い意志を持って描くときに、児童ポルノに該当してしまうのではないか、というところまで踏み込んでしまうことはあるかもしれません。でも、明らかに誤解を受けやすいと自分で思うような創作はしないと思います」

 そこで、今後はどのような創作を行っていくつもりかと尋ねてみたところ……。

「絵というものは、幼い時からたしなんできたものなので、描き続けていきたい。自分の中で表現したいものはたくさんありますから、今回、俎上にのぼったもの以外も表現していきたいのですが……具体的なものは今は述べられません」。

 あくまで過去の写真集を素材として架空の人物を描き出すという新しい形の創作活動に対して、被写体と同一人物などとの言質を重ねて有罪判決を下す裁判所。

 ただ、裁判所が悪などと断じることはできない。なぜなら多くの人々も「CG児童ポルノ裁判」という通称もあってか、いまだに「写真集をトレースしてCG加工した」あるいは「コラージュである」という誤解しているからである。

 これまでの公判で、トレースやコラージュでないことは明らかになっている。さまざまな報道で「CGで裸の少女を描いた」といった言葉が使われていることも、誤解を呼んでいる原因だ(そもそも、高橋さんは一度もCGという言葉を使っておらず一貫して「絵」と述べている)。

 実際にはCGを用いて写真のような人物画を描いてみたいという意図が先にあったことは、述べておかねばならぬだろう。

 根本的な問題は、創作物が児童ポルノであるとされたことである。

 今、必要なのは法や制度の解釈で語るのではなく、尖った表現方法は、いつの時代でも秩序の維持を図る権力の弾圧を招くということである。

 高裁に場を移し、改めて創作であることを訴えることになった高橋さん。被告になったことや、今回の有罪判決に生活に支障があるのではないかと尋ねてみたところ、「周囲の人々は、ちゃんと理解してくれているので大丈夫です」と、朗らかに語った。

 一方で、すべてが手弁当の弁護団は苦労している様子も。ますますのカンパが求められているようだ。

※弁護団より新聞・テレビなどでも報道されたため問題ない旨が述べられたため、実名報道に切り替えます。

 (取材・文=ルポライター/昼間たかし http://t-hiruma.jp/)