大阪のあるマンションのエレベーター内で、男性と二人きりになった女性が痴漢の被害に遭いました。事件を受けて、警察は「防犯情報」としてツイッターでこう注意を呼びかけました。「エレベーターでは男性と二人にならないように乗り過ごしてください」。このツイートに対し、「非現実的では?」「被害者に自衛を強いている」といった声が。どのように考えればいいのでしょうか。性被害者の支援団体と大阪府警に尋ねました。
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「エレベーターでは男性と二人にならないよう…」
防犯情報をツイートしているのは、大阪府警府民安全対策課の公式アカウント。府内で発生した痴漢や車上荒らし、不審者情報などを随時発信しています。その中で、今月7日に投稿された痴漢被害の発生を伝える投稿が話題になりました。
今月5日、浪速区のマンション内のエレベーターに乗り込んだ女性が、後から乗ってきた30歳くらいの男に胸を触られたというもの。ツイートは男の特徴を伝えた上で「エレベーターでは男性と二人にならないように乗り過ごしてください」と呼びかけました。
この呼びかけに対して、次のような意見が見られます。
「エレベーター内で男と二人きりになるな、なんて無理」
「ドアを閉めるんですか?」
また、女性が誰もいないエレベーターに乗った後、途中階で男性が乗ってこようとした場合を想定して「ドアを閉めるんですか?」といった声も。
ただ、大阪府警と同様の呼びかけをしている都道府県警はほかにもあります。
広島県警は公式サイトで「見知らぬ男性と二人きりでエレベーターに乗らない」として、次のようなアドバイスをしています。
「もし、エレベーターを待っている時に見知らぬ男性と二人になったら、先に乗ってもらい、次のエレベーターを待ちましょう」
性被害者の支援団体に聞く
性暴力被害を受けた女性の支援をしている特定非営利活動法人「性暴力救援センター・東京」の平川和子理事長(68)に、今回の件を聞きました。
「センターでは女性に自衛を強いるような形での支援はしていません。たとえば『女性は夜道を歩かないで』といった呼びかけ。性被害を受けた女性は『もっと抵抗すれば防げたのではないか』『あの時に夜道を歩かなければよかったのではないか』などと自分を責める気持ちでいっぱいになってしまいます。そうした時に『夜道を歩かないで』というメッセージを見ると、『やっぱり自分が悪かった』と必ず思ってしまいます。今回のツイッターの件も、これに近いものを感じます」
しかし、「性被害を受けた女性の多くが『男性とエレベーターに乗れない』と訴えているのも事実」と平川さんは話します。
警察からの呼びかけが適切か否かの議論はさておき、エレベーターの利用をめぐっては「2人きりにならないようエレベーターを見送る」といった、トラブルを避けるための努力をすべきなのでしょうか。
「そこまでは団体としては言いづらいところがあります」と平川さん。「すべての男性が怖い存在ということでもないですから。ただ、防犯ベルや監視カメラを備えるなどの環境整備はきちんとされなければならないでしょう」
大阪府警の見解は
大阪府警府民安全対策課は、今回のツイッターの趣旨について次のように説明しています。
「性犯罪は魂の殺人とも言われ、大阪府警としましては、万全の捜査を尽くして被疑者を検挙し、様々な防犯対策と被害者支援を図っているところです。本ツイートはマンションのエレベーター内で発生した痴漢事件の被害申告に基づき、女性に対して注意を喚起するために行ったものであり、過度の自衛を強制しているものではありません。文字数の制限のあるツイッターでは十分な説明ができませんが、被害に遭わないための自主防犯行動を促すためにその一手段を発信したものです」
「男と二人きりになるな、なんて無理」といった声が出ていることについてはどうでしょうか。次のように回答しています。
「本ツイッターの『男性と二人にならない』とは、例えば、後方からついてきた見知らぬ男性がマンション内に入りエレベーターに一緒に乗り込もうとするような場合に『男性と二人にならないなどの注意をしてください』という意味であり、被害に遭わないための一手段を述べたものです。