GDC 2016の3日目である北米時間2016年3月16日,Oculus VRは,「Building for the Rift with the Oculus PC SDK」と(PC用SDKを用いた,Rift用の開発)と題する技術セッションを行った。
基本的には,仮想現実(以下,VR)対応型ヘッドマウントディスプレイ(以下,HMD)「Rift」向けアプリケーションを制作する開発者向けのセッションなのだが,RiftとWindows 10の関係や,Rift用のホームアプリといった具合に,興味深い情報がいくつも出てきたので,要点をまとめてみよう。セッションを担当したのは,Oculus VR(以下,Oculus)のエンジニアであるAnuj Gosalia氏だ。
■Riftを快適に使うにはWindows 10の最新ビルドがベスト
VR HMDでは,不快感をもよおす原因になる遅延や表示のJudder(ジャダー,カク付き。3Dグラフィックス業界では「Stutter」と呼ぶことが多い)をいかになくすが,アプリケーション制作において非常に重要となっており,Oculusでは,それを開発者に周知して,対策をとるように促している。
非同期タイムワープについて詳しく説明するのが本稿の趣旨ではないため,詳細は,西川善司氏による解説記事1と解説記事2を参照してもらうとして,大雑把に説明しておこう。「頭部の動きを取得したセンサーの情報をもとにしてレンダリングした映像を,頭の動きに合うよう位置をずらして描画するときに,V-Sync同期を待たない」のが,非同期タイムワープと呼ばれる手法である。
この非同期タイムワープを実現するためにOculusでは,「GPUプリエンプション」――GPUが処理を一時中断して,別の処理を行う機能のこと――を用いているのだが,Gosalia氏は「GPUプリエンプションはまだ完全ではない」と言う。
※Windows 10のビルド番号を確認するには,OS標準の「Winver」アプリを実行するのが簡単だ。
Gosalia氏によると,NVIDIAは「GeForce 361.91 Driver」以降,AMDは「Radeon Software Crimson Edition 16.3 Hotfix」以降のドライバで,Windows 8.1および7でも非同期タイムワープを利用できるようにしているという。「ただ,それでもWindows 10(のビルド番号10586.14以降)がよりベターである」(Gosalia氏)。
VRアプリケーションにとって重要な手法である非同期タイムワープだが,万能の切り札というわけではなく,いろいろなトレードオフがあるとGosalia氏は述べる。たとえば,「非同期タイムワープによって小さなJudderが起こる」(Gosalia氏)ほか,現行世代のGPUによるGPUプリエンプションがまだ完全でないといった問題があるそうだ。ただ,「次世代のGPUでは,GPUプリエンプションがより完全なものになるはずだ」と,Gosalia氏は述べているので,2016年以降に登場する新アーキテクチャのGPUに期待といったところか。
Gosalia氏は,非同期タイムワープ以外にもWindows 10のほうがRiftを利用するのに向いている理由をいくつか説明していた。その1つは,グラフィクスメモリの扱い方にある。
Gosalia氏の説明をまとめると,Riftは事実上,Windows 10が推奨OSということになるようだ。Riftを導入しようとしている人は,PCのOSをWindows 10に移行することも検討しておくべきかもしれない。
■Riftのホームアプリは「Oculus Home」
テクニカルな話から打って変わって,次の話題はRiftのアプリケーションに関するものだ。
Rift用アプリケーションは,Windowsのデスクトップから起動できるのは当然だが,Oculusが用意する独自のホームアプリ「Oculus Home」からも起動できる。Riftを装着したままでも使いやすいように作られているので,Rift用アプリケーションを起動するときは,こちらを使うのがメインになるかもしれない。
Oculus HomeからVRアプリケーションを起動したあとで,VRアプリケーションを一時停止すると,「Universal Menu」という汎用メニュー画面に切り替わる。ここでアプリケーションを終了させると,またOculus Homeに戻るという動作になるそうだ。
こうした仕組みがあるので,,アプリケーションは一時停止やOculus Homeに戻るといった動作を考慮して作成しましょう,というのが,開発者に向けたGosalia氏のメッセージである。ゲーマーとしては,Riftを利用するときには,こういう操作ができるということを覚えておけばいいだろう。
3月28日にはRiftの出荷が始まるので,早い人には月内か,4月早々に届くことになりそうだ。Oculus HomeやUniversal Menuの使い心地を,早く実機で試してみたいものである。
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