韓国人は、伝統的にウワサに流されやすい人々だといわれている。よくいえば、他人の話をすぐに信頼し、物事を疑わない国民性だといえる。韓国で商品を売る際には、テレビやラジオなどマスメディアを使って宣伝するよりも、口コミを利用したほうが効果が高いという。これは決して無根拠な話ではなく、大手マーケティング企業が大掛かりな意識調査を何度も行い、分析した結果だそうだ。
反対に、根拠がないウワサが簡単に信じられてしまうこともしばしば。時に、社会全体に根も葉もない嘘が広がることがあり、結果的に国中が大騒ぎになるということもある。韓国人と話をしていると、知的水準が高い人々においても、デタラメをうのみにしているケースが少なくない。「こんな頭のよさそうな人が、そんな話を信じているのか……」と、驚かされてしまう。
さて、ここ数年、そんな“ウワサ好き”な国民性に拍車をかけているのがSNSの存在だ。韓国社会では毎日のように“SNS迷信”なる、真偽不明なウワサが生まれては消えていく。その拡散スピードはとても速く、中には深刻な間違いも多い。よほど深刻なのか、韓国メディアがその“SNS迷信”の実態を調査・報告するケースが増え始めている。
最近、韓国を騒がせた“SNS迷信”のひとつに「玄米には毒性物質が含まれている」というものがある。なんでも玄米を食べると骨が溶けたり、人間をゆっくり死に至らしめるというのだ。そんなウワサに尾ひれがつき「昔の人々は玄米を絶対に食べなかった」というウワサまで出てくる始末。当然、そのような事実はない。
また、南米を中心に社会問題となっているジカウイルスについても、科学的根拠がない“SNS迷信”がちまたを駆けめぐっている。例えば、「ジカウイルスの潜伏期間は2年に達する」「女性が一度感染すると体から消えることがなく、妊娠すると小頭症の子どもが生まれる」「キスでも感染する」などというものだ。専門家によれば「潜伏期間は最大でも2週間程度。ウイルスが潜伏して、後に女性が妊娠した際に小頭症の子どもが生まれるということはない」という。この手の話は、深刻な差別や蔑視にもつながりかねないので、単なる“ウワサ好き”では済まされなさそうなものである。
そのほかにも「4月から交通関連の罰金が2倍」「MERS(中東呼吸器症候群)に感染した女性が働く風俗店がある」などの“SNS迷信”がささやかれている。この手の話の実例を挙げていけば枚挙にいとまがない。科学的、または客観的事実より、親しい人が言うことやちまたのウワサを信じる向きが強いという傾向が、韓国社会に与えている影響は非常に大きい。SNSの普及で、その傾向がより悪いほうに向かわないことを祈るばかりである。
(取材・文=河鐘基)