「医は仁術」というものの、病院で診察を受けるために整理番号を受け取るのにも金がかかる中国では、まさに「医は算術」の状況にある。
そんな中、驚くべき映像がテレビ番組で流された。
場所は、中国北部の内モンゴル自治区の省都フフホト市の病院。産婦人科の手術の最中、手術台に寝そべっている患者と女性医師が激しく口論している。激高した医師は、点滴用の輸液袋で患者の足を叩いたり、足を抱えてねじ曲げたりしている。患者のほうはなすすべもなく大声でわめくばかり。いったい何が起こったのか?
報道によると、手術中に医師が突然、手術料の値上げを宣告。それを承服せずに文句を言った患者に対し、医師が暴力を振るったというのだ。この病院は処罰を受けたが、同様の例は、ほかの病院でも日常茶飯事だという。
これを見たネット民たちは、この医師の行為に、驚くやらあきれるやら。中国版Twitter「微博」には、「医師はテロリストよりも恐ろしい」「オレが手術を受けた時なんか、途中で医師はスマホをいじり始めたぞ……」といった書き込みが寄せられている。
「まな板の鯉」である手術台の上の患者に対し、手術料の値上げを力で承服させるという、ボッタクリ風俗店のタケノコ剥ぎにも劣る手口が横行している状況について、中国事情に詳しいフリーライターの吉井透氏はこう話す。
「最近では、ネット上の口コミなどにより、人気のある医師とそうでない医師の差が歴然としている。人気のない医師は患者からの袖の下も受け取れず、収入減にあえいでおり、こうしたボッタクリに手を染める者もいる」
中国の患者は、病魔と悪徳医師、両方と闘わなければならないのである。
(取材・文=佐久間賢三)