2015年9月に結婚した千原ジュニア。芸能界で確固たる地位を築き上げている芸人が、ついに身も固め、いよいよ波に乗っているように感じる。
そして先日、『このたび、便所は宇宙である』(千原ジュニア/扶桑社)が発売された。本書は、第1巻『すなわち、便所は宇宙である』、第2巻『とはいえ、便所は宇宙である』、第3巻『あながち、便所は宇宙である』、第4巻『はなはだ、便所は宇宙である』に続く、週刊SPA!の人気連載の書籍化「第5弾」なのだ。小説ではないかと勘違いしてしまうようなタイトルだが、その中身は全然違う。本書についての説明が巻頭に書かれている。
千原ジュニアが住む自室のトイレには、一冊の黒いノートが置いてあるという。普段からトイレで物思いにふけることが多いという彼は、そこで思いついた言葉をノートに書き記す習慣があるというのだ。
つまり本書では、千原ジュニアが自室のトイレでひねり出した言葉をひもときながら、その世界観を巡る思考の旅へと連れて行ってくれるのだ。ひねり出しているものが2種類あるので、果たして内容はいかほどか…と疑ってしまうが、読み進めると圧巻の「千原ジュニア感」である。テレビで見せてくれる話の構成の上手さを本でも体験できるという贅沢ぶりだ。
現在の奥さんと結婚に至るまでの、トイレに入って書かれた言葉が収録されているので、のろけた内容がつまっているかと思えば案外そうでもなく、思いの丈をすべて吐き出すような内容の数々に、普段は見ることのない千原ジュニアの一面を垣間見ることができて新鮮である。
特に「年齢」の話では、瞑想の末に導き出された言葉が書かれている。
豊麗線は、人間が引ける線のなかで一番美しい線です。
この他にも、千原ジュニアらしい珠玉の話や暴露話も収録されており、最新刊ということで、結婚の秘話も語られている。幸せな内容が書かれているかと思えば、そうでもない内容に思わず、くすりと笑ってしまう。気になる内容は、ぜひ本書をチェックしてほしい。
巻末には、千原ジュニア×東野幸治の「連れション対談」が繰り広げられている。東野幸治は「同じ女性と2度結婚した」異色の経歴の持ち主。そんな大先輩を相手に、新婚の千原ジュニアが恐る恐る異色の経歴について切り込んでいく。
さらに、この2人の対談はどんどん展開し、兄の千原せいじの話になり、仕事の話へと移り変わっていくが、特に仕事に関する対談が心に残る。一流がひしめき合う芸能界で、一線級の活躍を続ける2人。体験談を交えながら仕事に対する哲学にも少しだけ触れられているのだ。
最後に、印象に残った2人の言葉を紹介したい。
ジュニア 東野さんって、若いときからちゃんと絶望してはりますね。
人は静かな場所に1人で連れていかれると、自然と様々なことを考えるようになる。埋もれていた記憶を引きずり出し、片隅にこびりついていた感情をはがして、もう1人の自分が瞑想の中を飛び回る。千原ジュニアの場合、それがトイレだったのだろう。トイレという小さな一室は、宇宙の広がりを感じさせる瞑想ができる。つまり、本書を持ってトイレに入れば、誰もが宇宙を感じる瞑想ができるのではないだろうか。
文=いのうえゆきひろ