NHK朝の連続テレビ小説『まれ』で、主人公の先輩パティシエを演じていた女優・柊子が、シチュエーション・コメディの主演を飾る。舞台『かすていら 兄と私の一番長い日』は、焼き鳥屋を営むヒロインと、政治の世界に飲み込まれていくその兄、そしてその周辺の人たちが繰り広げる人情喜劇だ。
あの女性はいったい誰だろう。『まれ』を観ていて、そう思った人は少なくないだろう。主人公が修行を重ねたケーキ店の、長身の先輩パティシエ「陶子さん」。ちょっと近寄りがたい彼女の存在感が、場面にアクセントを与えていた。彼女の名は「柊子」(しゅうこ)。14歳の時から舞台に立ち、女優やモデルとして活躍している。
「私の所属している事務所が、年に1回舞台公演をしているんですけど、中学生の頃にその稽古を見学させていただいたんですね。そうしたら演出の嶋尾康史さんが『幕の開け閉めをやってみない?』と声をかけてくださって、実際にやってみたら『開け閉めのタイミングが上手な人は、きっとお芝居も素敵にできるよ』と言われて。そのことが純粋に嬉しくて、もっとやってみたいと思ったんです」
憧れの舞台で毎年研鑽を重ね、『かすていら~』は彼女にとって、5本目の主演作品となる。
「私が演じる『都子』は活発な女性。言いたいことははっきりと言うタイプの人ですね。物語に政治が絡むとなると、難しいのかなと思われる方もおられると思うんですけど、この作品はとても軽やか。たくさん笑って、ほっこりした気持ちで帰っていただけるような、そんな作品になっていると思います」
シチュエーション・コメディは、演じ手側が狙って笑いを取りにいくのではなく、ただひたすらに一生懸命な姿を見せることこそが肝要だと語る彼女。『まれ』ではこんな体験をしたそうだ。
「クランクインする時、監督に『(頑張らないと)埋もれちゃうからね」って言われたんです。君がはっきりと『陶子さん』としてそこに立たないと、みんなに負けてしまうからねと。ビビっている暇はなかったですね。撮影期間中はずっと、背中を叩かれ続けているような思いでした」
彼女は今はっきりと、女優としての成長期にある。その成果を丁寧に磨きあげて、この舞台に乗せる覚悟だ。
「去年いらしてくださったお客様には『あ、ちょっと変わったな』と思っていただきたいし、『まれ』で私を知ってくださった方には『こんな顔もあるんだ』と思っていただきたい。そして今年いらしてくださる方には、来年も観ていただきたいんです。1年ずつ、本当にこつこつと、私たちの公演をメジャーにしていきたい。今回、東京公演の本番は3日間しかないですけれど、全ステージが勝負だと思っています」
東京公演は3月25日(金)から27日(日)まで、新宿シアターブラッツにて上演。チケットは発売中。
取材・文:小川志津子