中国メディアの環球網は16日、「第二次世界大戦の誤った常識:1945年、日本は“無条件降伏”したのではない」と題する文章を掲載した。
文章は冒頭で、中国では学界もメディアも、「日本の天皇は米国・英国・中国によるポツダム宣言を受け、無条件降伏を宣言した」と認識しているが「史実には全く合致しない」と主張。
文章は次に、1944年のカイロ宣言では米英中の合意内容として、「3国は日本の無条件降伏を勝ち取るべく、重大かつ長期に渡る戦闘を継続する」と書かれていると紹介。
しかし、ポツダム宣言では、第5条で「われらの条件は以下の条文で示す通りであり、これについては譲歩せず、また、われががここから外れることもない」と条件を示し、第13条では「われらは日本政府が全日本軍の即時無条件降伏を宣言し、またその行動について日本政府が十分に保障することを求める」と記されていると指摘。
注目すべきは、「日本の無条件降伏」と「日本軍の無条件降伏」は意味が違うと指摘。しかも、ポツダム宣言では「条件」として、日本政府が履行すべきことを表明していると説明。つまり、日本政府が「合法性存在」であることを認めていると論じた。
文章は、日本政府の「合法性」を認めたことは、「天皇制の存続を認める含み」につながると指摘。さらに、当時の東郷茂徳外相も日記に、ポツダム宣言に「われらの条件」と書かれていることから「連合国は無条件降伏を求めているのでないことははっきりしていた」と書いたと紹介した。
また、9月2日に東京湾上で停泊する米戦艦「ミズーリ」の上で署名された休戦協定の文書にも、「日本国軍隊および日本おっくの支配下にある一切の軍隊の連合国に対する無条件降伏を布告す」と書かれており、「軍の無条件降伏」であり「国家の無条件降伏」と見なすことはできないと主張した。
文章は、米国には天皇の戦争責任を追及せず、天皇に退位させず、天皇制度を残すことが米国の国益につながるとの考えがあり、日本は米国の思惑を利用することで、国体および天皇制を戦後も残すことに成功したと論じた。(編集担当:如月隼人)
**********
◆解説◆
興味深いのが、上記文章を掲載する意図だ。中国人は自国が連合国に加わり、第二次世界大戦に勝利したと認識している。「実際に戦ったのは国民党」との指摘が発表される場合はあるが、中華人民共和国はその国民党に勝利して、中華民国の後継国家として成立したので「中国が勝利」したことにかわりはないと考える。
上記文章は、日本政府は自国軍に「無条件降伏」させたが、日本国そのものが無条件降伏したのではないと強調している。しかも、米国の思惑と日本の思惑が一致したと主張している。中国人の多くは現在の“最大の敵”を米国と感じている。上記文章は「中国は第二次世界大戦で、中国は日本の“息の根”を完全に止めたわけでなく、日本と米国はその後、結託した」と感じられる文章だ。つまり日米に対する敵愾心を煽り立てる文章であると解釈することができる。(編集担当:如月隼人)(イメージ写真提供:(C)Bryan Busovicki/123RF.COM。ハワイ・真珠湾にある戦艦ミズーリ記念艦)