上半身裸の幼児写真は児童ポルノか? イオンの紙おむつパッケージ巡り騒動 | ニコニコニュース

パッケージ写真から「乳首が消えてる」と話題になった、イオンの紙おむつ
withnews(ウィズニュース)

 スーパー大手のイオンが販売する幼児用紙おむつのパッケージ写真を巡って、幼児の乳首が「不自然に消されている」とネット上で話題になりました。イオン側は意図的な加工を否定しましたが、ネット上の騒動は、児童ポルノへの関心の高さを示す結果となりました。そもそも、裸の幼児が写っていたら児童ポルノになるのか? なぜ、こんな騒ぎになったのか? 専門家に聞きました。

【写真】乳首が消えてる??イオン「トップバリュ」の紙おむつパッケージ

「事情があって乳首消されてる」臆測が拡散
 話題になったのは、イオンのプライベートブランド「トップバリュ」の紙おむつ「男女共用ベビーパンツ」です。

 着用イメージとして、サイズによって2種類の写真がパッケージに印刷されています。紙おむつだけを着けて上半身は裸の幼児について「乳首が加工で消されているのでは?」という指摘がツイッターで拡散。元のつぶやきは1000リツイートに迫ります。

 「事情があって消してるんだろうけど、なんか不気味」


 「これも(児童ポルノの)単純所持で規制対象なんですかね」

 ネット上では自主規制を勘ぐる声が飛び交いました。

イオン側は否定「写ってますよ」
 商品を販売するイオンの子会社「イオンリテール」の担当者に確認したところ、「よく見ると乳首は写っていますよ」と、意図的な加工を否定しました。

 「キレイに見せるために一般的なモデル写真と同じように画像処理をしているだけで、特段の問題があるとは思っていません」と担当者。

 確かに実物を見てみると、一見しただけでは見落としそうなぐらい薄い肌色の、乳首らしき小さな点が確認できます。

性欲を興奮させるかがカギ
 それでは、イオン側が自主規制で消していないとしたら、この上半身裸の幼児のパッケージ写真は児童ポルノになってしまうのでしょうか?

 「それだけでは児童ポルノとは言えない」というのが、児童ポルノ規制に関する著作がある園田寿・甲南大法科大学院教授(刑法)の見解です。

 児童買春・児童ポルノ禁止法では、児童ポルノについて次のように定義しています。

 (1)「児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の姿態」


 (2)「他人が児童の性器等を触る行為又は児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの」
 (3)「衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位(性器等若しくはその周辺部、臀部又は胸部をいう)が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するもの」

 この三つ目の「衣服の一部を着けて胸部を露出している」のが、今回の幼児の写真に当たります。

 ちなみに同法では、児童の性器とそれに準じるものとして、「性器、肛門又は乳首」と定めています。第二次性徴期までは女児も乳房が未発達なためです。しかし、男児も女児も扱いは同じです。同法では買春やポルノの被害者として「児童」としか記しておらず、男女の別を定めていません。

 それでも、上半身が裸なだけでは児童ポルノにはなりません。現に、テレビ番組やCMなどでも上半身裸の男女の赤ちゃんはよく見かけます。「性欲を興奮させるか刺激」することで初めて、児童ポルノとみなされます。

 この「性欲」のあり方は人それぞれですが、「小児性愛者などではない、いわゆる一般的な人たちの性欲がかきたてられるかどうか」(園田教授)が、判例によって判断基準とされています。だとすれば、上半身が裸なだけで児童ポルノ呼ばわりするのは、やはり過剰反応と言えるかもしれません。

「誤解を招かない手法を検討しては」
 園田教授によると、世界的な人権保護意識の高まりなどを受けて、国内の裁判でも要件を緩やかに解釈する判例が増えつつあり、児童ポルノと認定される範囲は広がっているそうです。

 3月15日には、裸の女児を本物そっくりに描いたCGの一部が児童ポルノに当たるとして、制作・販売した被告が児童ポルノ製造などの罪で有罪となる判決が東京地裁でありました。このような動きを受けて、ネット上では何が児童ポルノに当たるのかを巡り、連日のように意見が飛び交っています。今回の紙おむつをめぐる騒動も、表現規制への懸念が影響した可能性があります。

 こういった風潮を踏まえて園田教授は、「たとえば幼児の写真ではなく可愛いクマのイラストにするなど、商品を作る側も、誤解を招かない宣伝手法を検討するのがよいのでは」と話しています。