デッキ構築について説明するという連載の性質上,ゲームの遊び方の説明は一切いたしません。すでに遊び方を理解している人が,対人で勝ち抜いていくためのデッキ作りのイロハを中心とした連載となりますので,ご了承ください。
突然だが,あなたは「Hearthstone: Heroes of Warcraft」(PC / iOS / Android)で試合をする時に,何に基づいて行動を判断しているだろうか。自分の手札,マナ数,盤面の状況,予想している相手の手札,自分と相手の残り体力といった具合で,人によってその判断材料は異なるはずだ。
各ターンの状況にはさまざまな情報が詰まっているし,それらから判断して行動するというのは,試合を勝利に導くために重要である。しかし,改めて考えなおしてみてほしい。その判断は,そのターンの情報,もしくは直近のターンの流れのみから判断したものではないだろうか。もしYESだった人は,今回の記事をしっかりと読んでいただきたい。
というのも,判断材料は必ずしもその場の盤面だけにあるものではないからだ。最初に出てきたミニオンや呪文で対戦相手のデッキ構成を判断し,それに対する戦略に基づいて行動できるかどうかで,勝率に大きな影響が出る。今回は,そんな試合全体を通した“ゲームプラン”の話をしたいと思う。
近頃のHearthstone
あと,優勝したmattunさん,おめでとうございます! アジア太平洋選手権も頑張ってくださいね!
■デッキによってゲームプランはまったく違う
最初に話しておきたいのは,自分が使うデッキによって,似たような盤面でも正解は異なるということだ。この話は,フェイスハンターとコントロールウォリアーという対極のゲームプランを持つデッキ同士で比べるとよりわかりやすいだろう。
例えば,3ターン目で対戦相手に3/3のミニオンがいて,自分が3点火力の武器を装備した場合,あなたはどのような行動を取るだろうか。その武器で盤面のミニオンを叩くという判断をする人もいれば,相手のヒーローを叩くという判断をする人もいるだろう。だが,その判断は使用しているデッキに関わらず,同じ判断になるだろうか? 答えはNOである。
では,なぜそうなるのか。
一方で,コントロールウォリアーを使っているときは,このデッキが得意とする長期戦に持ち込み,対戦相手の息切れを狙っていくことが主なゲームプランになる。そのため,急いで相手のヒーローの体力を削る必要はなく,むしろ盤面のミニオンをどんどん除去してアドバンテージを稼いだ方がいい。そのため,コントロールウォリアーのゲームプランに沿う形にすると,盤面のミニオンを武器で叩くという回答になるのだ。
今回挙げた例は極端ではあるものの,その時のシチュエーションに合わせてゲームプランに沿った動き方ができるかというのは,勝率に直接影響する。Zooウォーロックを使っている時に,盤面の有利を取っているにも関わらず,その後もミニオンの処理を優先し続けた結果,試合を無駄に長引かせてしまい,勝てた試合を落とす,というのは実際によく見かける光景だ。ここを改善するだけでもZooウォーロックでの勝率は間違いなく上がっていくだろう。
■ミクロよりもマクロで考えよう
では,ゲームプランに沿った動きをするとはどういうことなのか。 ここでは,レノウォーロックを用いて考えてみよう。
【OTKレノウォーロック サンプルデッキ】
OTK(One Turn Kill)レノウォーロックのゲームプランは,相手ミニオンの除去や,レノ・ジャクソンの回復で序盤〜中盤を耐え,終盤にリロイ・ジェンキンス,凄まじき力,無貌の操り手による1ターンキルコンボを決めるといったものだ。
では,このレノウォーロックで勝つには,どのようにプレイする必要があるのか。大まかに言うと,下記の2点を押さえることが重要だ。
(1)対戦相手のミニオンの除去と,自身の体力回復を優先。長期戦に持ち込むことを考えてディフェンシブに動く。
(2)コンボパーツを手札に揃えるため,ヒーローパワーによるドローを積極的に行う。
(1)については,相手ヒーローのフェイスを叩く必要がないということでもある。コントロールウォリアーのように,体力とは別軸であるアーマーで防御を固めるタイプのデッキと戦う場合はその限りではないが,それ以外では仮に終盤まで相手ヒーローの体力をまったく削っていなかったとしても,アレクストラーザで相手の体力を15にしてしまえれば問題ない。
このように,Zooなどの速攻型デッキでは相手ヒーローを叩くことが正解だった盤面でも,OTKレノウォーロックを使う場合,必ずしもそれが正解ではない。そのデッキにおいて正解となる行動は,その場の盤面という「ミクロ」ではなく,全体のゲームプランである「マクロ」で見なければならないのだ。
■対戦相手のゲームプランを挫け!さまざまなデッキを使い,ゲームプランを把握せよ
もちろん自分のデッキだけでなく,対戦相手のデッキにもゲームプランは存在する。だとすれば,対戦相手のゲームプランを妨害するという動きは,自身の勝利へとつながるはずだ。では,対戦相手のゲームプランを妨害するとはどういうことなのか。以下に具体例を挙げて説明していこう。
【アグロシャーマン サンプルデッキ】
上記のアグロシャーマンは,名前の通りアグロタイプ(速攻型)に属するデッキで,序盤から一気に攻め立て早期に勝負を決めてしまおうというコンセプトで作られている。最大のキーカードとなるのがドゥームハンマーで,合計16点の火力を持つこの武器がアグロシャーマンのフィニッシャーとなる。
では,逆にアグロシャーマンを相手にする場合はどうすれば良いのだろうか。Zooウォーロックを例に考えてみよう。
【Zooウォーロック サンプルデッキ】
まず序盤で大事なのは,対戦相手のゲームプランの軸となるトンネルトログをどのように捌くかである。マリガンの理想を言えば,ヴォイドウォーカーや呪われた蜘蛛と鬼軍曹のコンボが決まる手札だと良い。ヴォイドウォーカーと呪われた蜘蛛は,盤面に出ても除去されにくく,とくに呪われた蜘蛛は除去されても有利を取れるので,1ターン目後攻からコインで出せば,2ターン目にかなりの確率で鬼軍曹を絡めてトンネル・トログを除去することができる。
対戦相手がレプラノームや鬼軍曹からスタートした時にも有効に働くため,呪われた蜘蛛は,対アグロシャーマンの序盤におけるキーカードの1つといえるだろう。また,ネルビアンの卵と凄まじき力のセットも,序盤のトンネル・トログを除去するためには有効な手なので,後攻ならばマリガンで積極的にキープしておくと良いだろう。炎のインプも有効手となることはあるが,自身の体力を削ってしまうことや,除去スペル,レプラノーム,鬼軍曹でも対処されてしまうことを踏まえると,次善の策程度に考えておいたほうが良いだろう。
もう1つ厄介なカードであるドゥームハンマーを挫くためには,アルガスの守護者が有効だ。対戦相手がドゥームハンマーを装備するであろう5ターン目になる直前にアルガスの守護者を場に出せば,直後のドゥームハンマーの攻勢を防ぐことができる。
Zoo以外のデッキで対峙する場合でも考え方は同じで,序盤のトンネル・トログを除去するための火力と,ドゥームハンマーに対処するための挑発ミニオンの運用がカギとなる。 後者に対しては,酸性沼ウーズやハリソン・ジョーンズなどの武器破壊ミニオンで対処できればより良く,それらが決まれば勝利も目前だろう。
「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」という格言もあるが,対戦相手のデッキについてより深く知ることで,どうすることが相手の嫌がる行動となり,ゲームプランを挫くことにつながるかが分かるようになる。そして,さまざまなデッキについて幅広く対策するためには,それらを実際に触る必要があるのだ。
著者紹介:ルネ
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