《解説》
現時点の日本では“ドリュー・バリモアと短期間結婚していたよく分からん男”というボンヤリとした認識で、一部の映画ファンの記憶にだけしかその名を留めていないであろう、芸人のトム・グリーンが自らの監督・脚本・主演で作り上げた不愉快コメディ。
観客にケンカを売っているとしか思えない内容で、その年のラジー賞で大量ノミネートされ作品賞・主演男優賞を含めた5部門で受賞。
その結果、やはり大量ノミネートされていたベイ公のトンチキ映画『パール・ハーバー』が無冠に終わるというプチミラクルも発生させています。
脚本には、他のグリーン作品(TV番組とかライブビデオとか)の台本を書いているらしいデレク・ハーヴィという人物の名も。
原題『FREDDY GOT FINGERED』…意味は“フレディがチンコをいじられた”とかそんな。
もう28になるというのに「超人気アニメーターに俺はなる!」と言うばかりで仕事もせずに実家に寄生し、スケボーで走り回ったりツレのダレン[〜ハーランド・ウィリアムズ]と遊び回ったりのニートライフを満喫していたゴード・ブロディ[〜トム・グリーン]は、突然家を出て就職すると宣言して、息子のボンクラ具合に頭を悩ませていた父親のジム[〜リップ・トーン]と母親ジュリー[〜ジュリー・ハガティ]、それにゴードのアホさに迷惑を蒙りっ放しな真面目な弟フレディ[〜エディ・ケイ・トーマス]を喜ばせる。
就職祝いのオープンカーをジムからプレゼントされたゴードは、勤務先であるサンドウィッチ工場があるロスへと意気揚々と出発するのだが、その真の目的は自作アニメの企画を有名アニメ会社へと持ち込んで、一瞬にして成功を収めようという頭の悪いモノであった。
普通ならばマッハで警察沙汰になる無茶を何度も繰り返し、アニメ会社の社長であるデヴィッドソン[〜アンソニー・マイケル・ホール]に“猫の擬人化キャラが透視能力を駆使して悪を倒す”みたいなシリーズものの企画書とキャラデザインを見せるコトに成功したゴードだったが、「キャラは悪くないが設定がダメだ。動物を主役にするならもっと動物を知れ」という答えが返ってくる。
ついでにデヴィッドソンに「本気で成功したけりゃ余計な仕事なんかせずに企画を練ってろ」と無茶を言われたゴードは、それを真に受けて工場を辞めてしまい、そのまま平然と実家に舞い戻る。
そしてゴードは、就職活動をするフリをしながら小遣いをせびり、スケボーのジャンプ台を作って御満悦だったり、大物ビジネスマンのフリをして下半身不随でロケットマニアの看護婦ベティ[〜マリサ・カフラン]と付き合ったりと、華麗なニートライフを再開するのだが、当然ながらそんな息子のボンクラぶりにジムは激怒し、親子関係は最悪の状態に。
それを心配したベティは一家に心理カウンセリングを受けさせるのだが、そこで自分のダメさを論われて追い込まれたゴードは「親父は昔からフレディに性的虐待をしていた」との主張をカマして話を有耶無耶にしようと試みる。
しかし、このゴードのアホな嘘がきっかけとなって、フレディはもうイイ年だというのに虐待被害児童の保護施設に送り込まれ、ジュリーは家を出てしまいジムは常時ブチキレモードに。
そんなこんなで家族は崩壊状態になり、ベティともケンカして気まずくなったゴードは、夢を諦めて現実的な人生を選ぼうとするのだが…
他の主な登場人物に、近所のおっさんマロイ[〜ジャクソン・デイヴィス]、その息子で何かにつけてトラブルに巻き込まれる少年アンディ[〜コナー・ウィドウズ]、アニメ会社のスタッフ[〜ドリュー・バリモア]など。
《感想》
「マジでこんなんが面白いと思ってやってんのか?」と監督に真顔で詰め寄りながらモモに膝蹴りとかを入れたくなる、3〜4年に1本レベルの規格外なクソ映画です。
上のあらすじだけですと、ありがちなスベり気味コメディだと思われるかも知れませんが、無軌道にブチ込まれる小ネタの数々がひたすらに不快感を煽るモノばかりで、それに加えて主人公のゴードが純粋にムカつくだけの男(馬鹿キャラ特有の愛嬌がなく、迷惑な行動を云々する以前に素の性格が最悪)として描かれているので、観ていて本気でハラワタが煮えてくるのですよ、コレ。
馬の種付け現場に遭遇してテンションが上がり、スタンバってる種馬のチンコを超ノリノリでしごくとか、車にハネられて死んでいたシカの死体をその場で捌き、その血塗れの皮をかぶってハシャギ回る(その結果ゴードはトラックにハネられるがカスリ傷)とか、ブチキレたジムに追いかけられた先で象に遭遇し、その象のチンコをしごいて発射させた大量のザーメンでジムを撃退するとかの、そんな文字に起こしただけでウンザリするような動物ネタの数々は、文句をつけるのも馬鹿馬鹿しくなるしょうもなさ。
シカに関しては、デヴィッドソンから「動物を知れ」とアドバイスを受けたのを曲解したという理由付けがありますが、他は特に何も無いってのがまた酷い。
そして、スケボーのジャンプに失敗して足の骨が脛から突き出るような重傷を負ったダレンの傷口をナメたり、勝手に出産に立ち会って赤ん坊の臍の緒を歯で噛みちぎったり、息をしてないその赤ん坊をグルグルとブン回してみたりのゴードの奇行なんかも、相当に観ていてグッタリさせられます。
ゴードがメインではない部分でも、ベティが足を殴るプレイを要求したりやたらフェラしたがったりと、下半身が動かないコトに絡めたネタを大量に振られているわ、アンディが特に意味もなく悲惨な目に遭うネタを何度も繰り返すわで、観客を“笑わせる”というより“ドン引きさせる”というのが目的なのではないかと思わせるノリが貫かれています。
方向性としては『ジャッカス』なんかと大差ないのに、何故にコレに対しては不愉快さが大幅に先行するかを考えてみた結果、ゴードによってカマされる馬鹿や無茶によって深刻な被害が続出するのに、ゴード自身は殆ど無傷でヘラヘラしてるのが原因ではないか、との回答がハジキ出されましたよ。
コメディとしてはワリと見かけるスタイルですけど(大物芸人が若手に無理難題を押し付けるのと構造は似ています)、この作品の場合はトラブルメイカーとしてのゴードの行動と、ネタを抜きにしたストーリーの中身の双方がこれっぽっちも面白くないってのが大問題ですね。
ワザワザこんなモンを観ようとする奇特な人もそういないでしょうが、全く笑えずにイヤな気分になるだけの可能性が極めて高いので回避推奨。【-9】