韓国の地方都市・浦項(ポハン)にある女子高のトイレで、遺棄された新生児が発見された。その後、通報を受けた救急隊員が駆けつけたが、新生児はすでに息を引き取った後だったという。現場では、新生児の胎盤と臍帯が一緒に発見された。
新生児が発見された当時、学校では全校生徒約900人が夜間の自習活動をしていた。警察は、誰かがトイレで出産後、遺棄したとみて捜査を開始。学校の入り口に設置されたCCTVの動画や、トイレに残されたトイレットペーパーなどを回収し、鑑識に回したという。韓国警察関係者は「新生児を遺棄した人物が、校内の人間か、はたまた校外の人間かはまだ明らかになっていないが、すべての可能性を考慮して捜査を続ける」としている。
韓国では児童虐待もさることながら、新生児遺棄が社会問題として浮上している。韓国には、日本の熊本市にある慈恵病院などが設置している、いわゆる「赤ちゃんポスト」のように、宗教団体が慈善活動として設置している「ベビーボックス」なるものがある。2011年にベビーボックスで保護された新生児の数は25人だったが、13年には208人まで増加しており、その後も数は増え続けているという。なお、このボックスを利用した母親の大半が「出産を親や周囲に知られたくなかった」「子育ては経済的に困難」という理由を告白している。
また、韓国では最近、新生児を買い付け、他人に転売(養子縁組)するブローカーが摘発される事件が頻発している。彼らは通称“養子ブローカー”と呼ばれている。先日拘束されたとある養子ブローカーは、育てる当てのない子を授かった女性の病院費を肩代わりしたり、金を渡し、生まれたての子どもを買い取っては転売していたという。明らかになっている手法としては、ネット上で「養子縁組の相談に乗る」といううたい文句を掲げ、妊婦に接近。その後、弱みにつけ入り、新生児を安値で買いたたくというものだ。
そう考えると、ベビーボックスで保護される新生児の数は、全体の一部にすぎないのかもしれない。女子高に残された新生児の死体の母親が学生であったとしたら、問題はいよいよ深刻と言わざるを得ない。
(取材・文=河鐘基)